オレにしてみればからかうのだってちょっかい出すのだってお前の隣にいるためだよってなもんなんだけど。


「…高尾。オレのことが気に入らないのは結構だが、そう幼稚な感情表現をされてはオレも苛立つのだよ」


図書館で本を読む、真ちゃんの隣に座ってアレコレ話しかけていたのは悪かったと思う。真ちゃんは本を読むのが好きだ。本っていうのは当たり前だけど文字がいっぱい詰まっていて、それの意味を把握するんだからバスケほどではなくったって集中力はいるだろう。それを乱した。そりゃ悪かったよ。…でもさ。


「…そりゃちょっと無いんじゃない、真ちゃん」

「何が。オマエを幼稚と言ったことか」

「そこじゃないし」

「ならなんなのだよ」


はあ、とため息ひとつ。苛立っているというよりは疲れているような、そんなんオレだってこのショックをため息で逃してしまいたい。真ちゃんがオレを素直に好いてくれていただなんて思いあがる気はなかったけど、まさか真逆の感情を、しかもオレから感じていただなんて思わなかった。なんだよ、それ。今までどんだけ、そりゃまだ半年も経ってないけど、どんだけ一緒にいたと思ってんだよ。オレだって悪態のひとつもつきたくなる。

本を閉じて眼鏡の真ん中をかちゃりと支えて、真ちゃんはオレの目を真っ直ぐに見た。いい加減はっきりしろとでも言いたげな瞳。コートの中じゃないから、オレも真っ直ぐに真ちゃんを見る。いい加減はっきりしてやんよ。


「オレは、真ちゃんが、」


す、きだよ。つまったのは恥ずかしさじゃなくて、悔しさとかなんかそういう類の感情のせいだった。だって真ちゃんはもうオレが嫌いだって分かってるから。嫌われてる相手に告白だなんて馬鹿げてる。それでもここで言わないと、これからの毎日どうしようって思ったっていうか、なんかもう脱力してそんな考えてる場合じゃなかったけど。

真ちゃんは目を真ん丸にさせながらオレを見ていた。予想通りではあったけど予想通りすぎてやはり脱力してしまう。お前さ、もうちょっと、オレの予想外に生きるつもりねーの。


「そ、…れは……知らなかった、のだよ…」


すまない。ぽつり零された声は、オレの予想外を思い切り跳び越えて着地した。お、お、真ちゃんが、あ、…あやまった!


「え、いや別にオレ真ちゃんに謝ってほしかったわけじゃないし、」

「だが、…その、傷ついた、んじゃないのか。オマエは」

「そ…りゃちょっとはそうだったかもしれないけど」


心底申し訳なさそうにオレを窺う、この目の前の男は誰だ。オレの知りうる限り、緑間真太郎という男は、他者をこれほどに気遣う男ではなかったはずだ。傍若無人で、唯我独尊で、それでいて――繊細なほどに。


「…悪かったのだよ」


ぽつりと落とされた謝罪の声に、分かってなかったのはオレの方じゃねえかと心中自分自身を詰ったりして。




君色万
(どんなお前も知ってるつもりだったけど)
(…これは想定外だよ、緑間…)




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