例えばこの一歩がおれにとってとても大きなものであったなら、おれはその光を糧にまた一歩踏み出せるだろう。






心なしか浮ついたような雰囲気がただよう船の上で、おれはひとり今年最後の料理に励んでいた。栄養バランスはもちろんのこと、見た目にもハデさを伴うように気をつかう。お祭りごとでも静かに楽しむ船長のために。船員全員が笑顔でいられるためのその一片に。

「みんなご飯できたよー」
「お疲れさまです、キャスケット」
「結構量作っちゃったんだけどみんな食べるよね」
「そりゃこれがメインの夕飯なわけだからだいじょーぶっしょ」
「コハリ。飯置くから、そっちにテーブル開けてくれるか」
「あいあーい」
「ベポは食器もってきてー」
「僕も一緒に行きましょう」
「アーイ!」

甲板に広がった静かに広がる陽気と期待、全員で準備をした最後の夜に料理を並べる。食堂から飛び出したおれたちの宴。それぞれが席に着き、手元に置いたグラスをとる。色とりどりにテーブルを彩るそれらの先に、おれたちの唯一であり絶対を担う姿があった。

「…さて、と」

いつも通りに肩に刀をかけていた船長が、その柄を握ってゆっくりとおろす。おれたちがどたばたと動き回っているのを楽しそうにどこか嬉しそうに、時を忘れたかのように眺めていたのを知っている。一年間。おれたちにとっては毎日はただ過ぎていく嵐のようで、だからこそ、この毎日が宝石のように煌めいていた。

「一年、誰ひとり欠けることなくここまで辿り着いた。まずはお前らの働きと、その悪運に感謝しよう」

船長からの賞賛の声。少しだけ照れくさくなってペンギンを見れば、同じようにおれを見た目と視線があった。隣のオウギと、その向こうのロナ。コハリとサラワが笑い合って、ベポは嬉しそうに体を揺らす。

「年をまたごうとおれたちに何ら変化はねェ。おれへの忠誠を欠くことなく、おれのためにその命を生きろ。この海の果てまで」

船長がペンギンに視線を送る。それを受けて頷いたペンギンが、そっとグラスをあげた。その光と揺れる月光に。

「――われらが船長に」

掲げた誓いと輝かしい未来に、全員の思いがひとつになる。








(――さあ、次の未来へ。)
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