ぱらり。ぱらり。静かな部屋に、紙をめくる音が響く。


「綱吉クン」

「なに」

「構ってよ」

「無理」


手元の書類を右から左に送りながら、白い物体を視界にも入れずに即答した。この白いの何いってんだ。


「なんで!」

「見りゃ分かるだろ。今仕事中」

「ボクは暇だよ?」

「聞いてない」

「綱吉クンのけちー!」


ぎゃんぎゃんとわめく白いのにオレはイラッと眉をひそめて、ソファの上でごろごろ転がっているそいつを一瞥した。こいつでも構ってろと貸してやったナッツをぎゅうと抱き込んで(ナッツほんとごめん)、拗ねた表情でオレを睨んでいる。
…それに惹かれない、わけではないのだけれど。


「暇が嫌なら帰れ」

「…ヤダ」

「構ってやれないっていっただろ。ちょっと今ごたごたしてるからって」

「…いった…けど、さ」


俯いて唇をとがらせて、お前は子供かといいたくなる。ずび、とないたのは寂しさからだろうか。オレの一言一言に傷つくくせに、こいつはオレから離れようとしない。(…殺されかけたこともあるってのに、)結局はオレも同じ、なんだろうけど。


「…白蘭」

「な、あに」

「こっち」

「…つなよしクン?」

「来いって」

「!」


豪奢な椅子を少しだけ机から離して、20度くらい回転させてからそう呼んだ。白蘭は気づくと同時にナッツを放り出して、それこそまるで犬みたいに走ってくる。潤んだ桔梗色にざわつく何かを抑えながら、言いつけどおり床に座って見上げてくる白を、手のひらでひとつぽんと叩いた。


「…お前ってさ」

「? うん」

「鎖で繋いでおきたくなるね」


ぱち、不思議そうに瞬く瞳、許可もなく膝に触れてきた手のひらに今日だけは見ないふりをした。こいつへのご褒美ならそんなものだ。

「そう?」首を傾げたまま、綱吉クンがやりたいならいいよ、といって嬉しそうに笑った白蘭に、なんでこいつこんなばかなんだろうと呟いた。






イハイ
(空と空とを繋ぐ糸)

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