焼けるような陽射し。たちのぼる草いきれ。走る鼓動にふらりと木陰に入り込むと、ささやかではあったがひんやりとした空気がオレを迎えてくれた。誘い込まれるままに倒れこむ。地面は未だ夜の温度を記憶して、じわじわとオレの体温と交じり合った。気持ちがいい。今日はこのまま昼寝でもしてしまいたい。

ぼんやりと揺らぐような意識のままぼうっとしていたら、背後でざり、と砂をこする足音がした。グラウンドは芝生だから、砂の音がするということはかなり距離が近い。うつ伏せのまま、微動だにせず沈黙を待った。

「倉橋?」

ぽつりと落ちた、オレを呼ぶ声。予想通りのあまい響き。
オレがこっそりと笑ったことに気づかず、声の主である佐治はオレを起こさないようにと配慮しながらすぐ後ろにしゃがみこんだ。感じる気配がさらりと揺れる。佐治の長い髪がこぼれる、その感触が手ににじむようだった。

「…寝てんのか」

今度は少しだけ不機嫌そうな声で、佐治の手のひらがオレの背中をぺちりと叩いた。そのままぶつぶつと低い声で呟いている。部活中だぞとかなんとか、怒るくらいなら放っておけばいいのに。佐治はかわいい。

こんなことは滅多にない体験だとそのまま狸寝入りを決め込んでみる。しばらく待って返事がないのをマジ寝だと判断したのか、佐治はため息と一緒にそこに腰を落ち着けたらしい。土と汗と、ほのかに感じる佐治の匂い。風が包む温度。後ろ手に置かれた手がうつ伏せの肩に少しだけ触れて、息をとめるこの一瞬が気づかれませんようにと目を閉じる。

「………陣」

不意に、佐治が呟いた。砂を噛む靴の音にまぎれそうなほどにか細い声。じゃりじゃりと砂を混ぜるように、それからたっぷりの時間をあけて、また小さく。

「…………………すき、だ」

ぎゅっと拳を握った。離れた手の行方を知りたくて思わずその後をこっそりとたどったら、膝を抱えて耳まで真っ赤にした佐治の後姿が目に飛び込んでくる。くそっ、だなんて悪態と舌打ち、音を立てずに身を起こして、その背中を思いっきり抱きしめた。

「、っく!…ら、はし、…っ、お前起きてっ、」
「おはよー雪哉」
「っ!」
「…オレもすきだよ」

振り向いたこめかみにちゅ、とキスを落とす。なーんてな、にこりと笑ってやれば、ふるふる震えだした佐治が魚のように口を開いたり閉じたり、「金魚みたいでカワイー」鼻先を指でちょんとつついたら、目の前の金髪がオレの目の前いっぱいに広がって、

「しね!!」
「ギャンッ!!」

…視界に散らばった星が、なんだか綺麗に見えた昼下がりだった。




(佐治ヒデェ!)
(うっせェ黙れバーカ)
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