グラウンドに横たわる。どこまでも透き通るような空気を肺いっぱいに吸い込んで、オレはただ頬を転がり落ちていく汗の足音を感じていた。

悔しかった。悲しくはなかった。自分が認められないのだと、そしてあの笑顔が作り出したサッカーの全てをズタズタにされたのだと、身を切られる思いにただ失望した。あの歪んだ光が燃え盛る瞳に、なにも出来ない自分自身が悔しかった。オレたちがあんなに信頼し、あんなに好きだといい続けた光を、守れなかったことが悔しかった。

(お前たちには才能がある!みんなでオレたちだけのチームを作ろう!)

初めて見た光だった。オレたちはみんな、そう思ってたはずじゃないのか。あの笑顔と言葉でサッカーに魅了されたオレたちは、あの願いを叶えてやろうとただがむしゃらにボールを追っていたんじゃなかったのか。オレに翼をくれたチームに浸透していくのは闇と、オレにとっての絶望ばかり、オレたちが望んだのはこんなチームじゃなかったはずだ。

(転んだァ?んなもん2秒で切り換えろ、すぐ立ち上がれたお前の方がずっとすごい)
(周りを見ろ。お前たちはひとりじゃない。全てはやるかやらないかだ、そうだろ?)
(今日も最高の試合だったな!お前らはオレの自慢の子どもたちだ!)

底抜けに明るい声が反響する。オレたちはあの光を信じてた。あの光がオレたちを頂点へ、そこから見える最高の風景を見せてくれるのだと、たとえ今いるところがだだっ広いだけの野原だとしても、それをただ真っ直ぐに信じてた。そうじゃないのか。自分自身に言い聞かせる。
信じてたんだ。少なくとも、オレは。なぁ。

「……ユーシ…」

ぎり、と握り締めた拳で地を叩いた。意味のない足掻きは息苦しくなるばかりで、自分のエゴのために周囲を巻き込むことに意味なんか見出せない日々が続いた。オレにはもう、走り続けるしか術はなかった。見失った光を追い続けるために、あの闇を憎むしか道はなかった。目を閉じても、思い出せるのは強烈に焼きついたあの嫌な笑みと、その後ろを去っていくオレの光の背中だけで。

歯を食いしばって立ち上がる。目蓋の裏に浮かんだ残像をかき消して、また足元のボールに指先で触れた。泥だらけのボール。少しだけ距離をとる。緩やかに風が流れる。


思い切り蹴り上げたボールは真っ直ぐとんで、細めた目の奥、オレの中の影に、鮮やかなあの笑顔を上書きした。



(それでもオレは、ユーシの宝でいたいんだ)
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