たんたんと軽やかに階段を上る。目の前の小さい頭がゆらゆら揺れて、その口がでさあ、と特に意味もない会話をつなげようと開かれる。
紡がれる声に耳を傾ける、その向こうに夕焼けが見えた。
「高尾」
「おん?」
「…なんでもない」
振り向いた背中にオレンジが降る。ちょうどよく光が射し込んで、瞳までが鮮やかな橙色に染まっていた。数段上にいる高尾と、今ならちょうど同じくらいの背丈になる。同じ目線の高尾を意識して見たのはこれが初めてで、それもそんなに悪くないような気がした。
その場に立ち止まって見上げているオレを、高尾の橙色が不思議そうに見返す。真っ直ぐに見るそれからなんとなく視線を外すことが出来なくて、そのまま近づいてくる夕暮れをじっと見つめていた。触れる前も触れてからも、その夕暮れは一層赤みを増していく。透き通るような。
「…あんまり見つめられると困るよな」
「…なら、もう見ないのだよ」
「それも困るなあ。好きだよ真ちゃん」
「まだ校内だ。そういう言動は慎め」
「うん」
時が止まるような、感覚だった。好きだよ、触れた場所以外は空気しか纏わない時が、静かにかちりと動き出す。夕闇に雲がかかる。それもまた一瞬でかき消されて、結局残されたのはまた淡く揺れる、仄かに笑う夕暮れだった。
高尾さんのイケメンスイッチにかこつけて全力でポエムってみるテスト