さっきから隣の部屋で何かごそごそ物音がする、と思っていたら、目の前の扉が突然勢いよく開かれた。


「じゃっじゃーん!」

「………はぁ」

「アレ、なにその反応」

「いや別に。つーか何やってんだお前」

「えー。似合うっしょ、学ラン」


いけすかねえ笑顔とモデル立ち、上から下までオレの制服を着込んだ黄瀬は、オレが嫌な顔をするのを見てくるりと回る。体格差も全然ないから余り袖もしてないし、正直学ランを着た黄瀬にしか思えない。


「あー、似合うってよりは違和感あるな」

「違和感?」

「お前いっつもブレザーだろ。珍しいとは思うけど」

「ぶー。お世辞でも似合うっていわないとモテねっスよ」


座っているオレの後ろ、黄瀬が背中合わせにどさりと座る。勢い余って思い切りぶつかられた気分だ。重い。そのままぐいっと寄りかかって来たので、機嫌を損ねられても面倒だと思ってこちらからも押し返した。


「へえ。お前だったらなんていうわけ」

「へ? そりゃ、似合うっスねーとか可愛いっスねーとか、女の子が喜びそうなのってそのへんじゃねっスか」

「ふうーん」


不機嫌とはいわないが拗ねた声、オレの制服がしわになりそうだ。ずしっとのしかかるその襟首をつかまえて、思い切りひっぱった。「う、わっ」がくりと体勢を崩した黄瀬の頭がオレの膝にのるように、文字通り引きずり倒す。


「な、にすんスか」

「似合ってるぜ、それ」

「へ」


ぱちりと瞬き。オレの気に入りの驚いた顔。頬が赤くなるのも間に合わないまま、たたみかけるように至近距離で囁いた。


「すげぇかわいい」

「か…がみ、っち、ちょっ」

「――…好きだぜ、黄瀬」

「う、」


うわあだかなんだかよく分からない呟きと一緒に、両腕で顔を覆ってオレに悪態をつき始める。「そこまでいってない!」なんていうかわいくない黄色頭に、次はどんなことを言ってやろうか、なんて考えた。







黄瀬が調子にのる→火神っちに返り討ちにあう
な展開が好きすぎて困ります
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