あいつがオレに目もくれないし、オレと会っても楽しそうになんか絶対に笑ってくれないから。
「あ、木吉!」
「…花宮か。また変なとこで会ったな」
「変かなーそうかなぁ。オレは木吉と会えてちょう嬉しいよ、今日ここ来てよかった!」
「そうか」
そこは街中のなんの変哲もない商店街で、オレは偶然ここに買い物の用事があって、そしたら前方から木吉が歩いてくるのが見えた。だから当然駆け寄って声をかけるわけだけど、木吉はいつも通り無感情にオレの言葉を流していく。
「木吉は何しに来たの?」
「黒アメを買いに来ただけだよ。あと、知り合いのおばあさんと話をしに」
「ふうーん。いつまでたっても他人に甘いんだね、木吉」
「そうか? このくらい普通だけどな」
「普通なんだーふーん」
オレとは話だけなら会いに来てもくれないくせにと、見も知らない女が途端に憎らしく感じた。オレの機嫌は急降下。それを過敏に感じ取ってか、木吉がちょっとめんどくさそうにため息をついた。
「…確かに、他人には甘いかもな」
「…別に繰り返さなくていーよ、ムカつく」
「基本他人に甘いオレだから、」
イラついてちょっとヒドイことでも言ってみようかと思った矢先、木吉に正面から押されて(っていうかどつかれて)立っていたところから建物の間にバランスを崩した。幸い倒れはしなかったけどと思ったら、それもそのはずで目の前の木吉がオレの腕をがっちりと掴んでいた。背中の向こうで太陽がひかる。
「…お前なんかに付き合ってられるんだろ、花宮」
至近距離で見た木吉の表情はすごく嫌そうで、あっという間に離された腕の痛みもオレは全然気にならなかった。
まこまこは木吉先輩の嫌そうな顔とか嫌がることとか好きそうだよね!って話。めちゃくちゃひねくれてるくらいがまこまこのウザ可愛さだと思います。