朝起きてちょっと伸びをして、多分ぼさぼさだろう髪を撫でつけながらリビングに出た。起きぬけからいい匂いがするとは思っていたが、案の定その向こうのキッチンでは同居人がエプロン姿でフライパンを振っている最中だった。自然と顔が綻ぶ。


「かがみっちおはよー」

「おう、起きたか。つってももう昼だけどな」

「え、オレそんな寝てた?」

「鏡見て来いよ、イケメンモデル。アレだけ酔ったにしてはフツウの顔してっけど、色々ヒドイぜ」

「うへー」


声をかけたら目が合って、頭をぽんと叩かれた。そんなにヒドイ顔してっかなあと洗面所に入る。…うん、何かこれ、なんつーか、確かにヒドイ。

普段はそんなに酔いつぶれたりするタイプではないのだけれど、昨日は久しぶりに火神っちも飲んでくれて、それで気分が良くなって色々と試し飲みを含めて量をいったんだっけか。機嫌いいお前もいいけど明日大丈夫かって途中で苦笑された覚えもある。オレばかだな、と洗面所に手をついてどんよりした。二日酔いはあまりしない方だから具合は悪くないけど、記憶があんまり残らないのが痛かった。オレなんか変なこと言ったりしてないよな…まあ、何いっても火神っち相手なら今更か。

顔を洗って髪に櫛だけ通してリビングに戻る。どうだったなんて含み笑い、うっさいっスと返せばまた笑われた。今日は火神っちのが機嫌いい。なんか悔しい。


「朝ごはん、何」

「ハムエッグとサラダと、あとトースト。飯のがいいか?」

「あるならご飯がいっス」

「冷凍してあるから、それチンして食え」


冷凍庫を開けたら、ラップに包んであるご飯がふたつ入っていた。昨日の夕飯の残りだと思うけど、毎回こうやってジャーから移してラップに包む火神っちはほんと細かいと思う。悪い意味じゃなくて。こういうのって、やろうと思ってもオレにはできない。

ひとつチンしてお茶碗に盛って、自分の席のとこにお箸と一緒に置く。もう一膳は隣に並べた。正面のテレビのスイッチを入れて、いつも昼頃になるとやっている音楽番組をつけた。見るためじゃなくてちょっとしたBGM代わりだから、そのまま画面だけ消す設定にする。緩やかな洋楽。うん、いい感じ。


「ドレッシング、新しいのでいいよな…ってオイ、なんでオレの箸こっちなんだよ」

「オレ開けとく。あと、なんか今日はそういう気分」

「隣じゃ狭くねえ?」

「狭くないっス。隣いてよ」

「…しょうがねぇな」


エプロンを外して、キッチンについてる台に放る。変なとこ大雑把で変なとこ几帳面。一緒に住んでみると分かることって、当たり前だけどたくさんある。

座って隣の椅子をぽんぽんとたたいたら、そこに座る前に触れるだけのキスをくれた。間近で笑って、ひでぇ寝癖、オレの髪を同じように撫で付ける。


「言い忘れてた。おはよ」


当たり前のことばが、今日は特別きらきらして聞こえた。






オチが思いつかなくて悶えました(ぎゃふん)
同棲したら火神っちの方がめちゃくちゃしっかりしてる妄想がひどくて未だに火神っちハイスペック妄想から抜け出せません。多分このまま行きます。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -