「また、ここにいたの」
屋上の扉、開け放ったそのすぐ真上に、ごろりと寝転がる足が見えた。見上げて声をかけたところで返答などないし彼にとって自分などどうでもよいのだろうが、それでも、だからこそ、わたしは彼を探し続けた。
いつも見つけるのは屋上だった。だからといって、最初から屋上に探しに来ることはなかった。彼はきっとそれをわかって、わたしが来るまでの数分を惰眠を貪ることでやり過ごしていたのだと思う。彼からバスケを奪ったのは、わたしにはどうしようもできない運命だった。それでもバスケに関わり続けるわたしを、本当はどう思っているのだろう。
「青峰くん」
「………」
「青峰くーん」
「………」
「青峰くんってば」
「…うるせーよ、ばーか」
「ばかでもなんでもいいけど、もう降りて来なよ」
「なんでだよ。めんどくせぇ」
「なんでじゃないよ。部活、どうするの」
「サボる。監督にもいっとけ」
ごろりと足が寝返りをうつ。最後の言葉が、声が、眠たさとは違う響きをもっているような気がして(でもそれもわたしの願望だったのかもしれないけど)、わたしはひとつ深呼吸をしてから、静かにはしごを昇った。
「青峰くん」
「…しつけーよ、さつき」
「だって、…放っておけないんだもん」
「放っとけよ。それでも」
のそりと起き上がって背をむけた彼。それが寂しかった。でもわたしには何もいう権利なんてない。彼をバスケに縛りたいのも、わたしがバスケと離れられないのも、全部わたしの勝手だから。
だから、その背にこつりと自分の背をあてた。いつもこうやって、慰められるのはわたしの方だったのに。彼を慰める気なんてないしそんな言葉をわたしは持たなくて、結局背中の温かさを感じたまま黙り込んだ。
青空を遮るものは、もうなにもなかった。
何か寂しくなっちゃった…
幼馴染以上カプ未満な青桃が好きです