「さーむいさむいさむいー!」

「うるせえよ」


帰りに駅で待ち合わせして、火神っちと一緒に線路の横をだらだらと歩いた。部活が終わった後だから空はもう真っ暗だ。しかも急に冷え込んだ日だったから息も白い。

ポケットに手を突っ込んだまま余りの寒さに迷惑にならない程度に叫んでみたら、火神っちの冷たい声がオレの鼓膜を叩いた。火神っちもつめたい。でもオレはそんなことではめげないので、ふざける振りをしてどーんとぶつかって抱きついてやった。うあーさむい。


「火神っちあっためて!」

「オレもさみーんだよ! あと外でくっつくな」

「うー。少しは優しくして欲しいっスぅ」

「…優しくしてんだろ、十分」


腕をぎゅうっと抱き込んで上目遣い。こういうのに弱いなんてことは全くないのだけれど、それでもちょっとだけ困ったように笑うのがたまらない。オレ好きな人は困らせたいんスよね、そういった時の呆れた顔もなかなかカッコよかった。

ぐりぐりと頭をなでられて、やんわりと腕を外された。しょうがないことだし半分以上はオレのため、だけど、やっぱりなんていうか、外でもカップルみたいなことしてみたい。わがままだって分かってる、火神っちを選ぶかフツウの恋愛を選ぶか、でもオレにとってはその程度のことだ。火神っちの側にいたいから、オレは大人しく腕を外して冷えた手をすり合わせた。


「明日はもうちょっとあったかいといっスねえ」

「そうだな。…お前に風邪ひかれても困るし」

「うわ、心配してくれんスか」

「当たり前だろ。好きなヤツが風邪ひいて嬉しいヤツなんかいねえよ」

「…今ものすごいきゅんときた」


手のひらに息をふきかけてごまかした。火神っちは発言について思うことなんか何もねえよって感じに普通に歩いてて、オレばっかり照れてるのがバカみたいだった。でも気分は悪くない。

オレほんとに風邪ひいちゃおうかなあとこっそり呟いてみた。そしたら火神っちが看病しに来てくれるかな。うつしちゃうのは嫌だけど、火神っちの作ってくれたご飯を食べて、火神っちがずっと側にいてくれるんだったら、そっちを取っちゃうかもしれない。そんな自分勝手な考え。でも案外いいアイディアじゃないかな。

つらつら喋ってちらりと火神っちを見たら、その瞬間だけ視線がかちりと合った。今度はため息っていうより、少しだけ長い息をふう、と伸ばす。オレのわがままを許容するときと同じ声、表情で、オレの頭をこつりとこづいていう。


「そんなの、風邪ひいてなくたって出来るだろ」






××回目のイシテル
(今のちょう惚れなおしたっス…!)
(…お前のツボがわかんねえ…)
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