手のひらでくるくるとボールを回す。鼻歌混じりにそれをついたり時折シュートしたりしていたら、隅の方に座り込んでいた敦が不思議そうにオレを呼んだ。
「室ちん」
「うん?」
「それオモシロイ?」
バウンドしたそれを追いかけて、弾みを止めずにそのまままたドリブルに入る。相手がいることを想定して動く、ストリートの頃のように軽快に走り回るのではなく、最低限の動きだけで相手をかわせるような術を。伸ばされる腕をかわしてシュートした、その軌跡を追う相手の目。
「そうだね。楽しいよ」
「ふうん」
「敦もやる?」
「ヤダ」
ぱり、チップスを噛む音と同時に断られる。それがおかしくて笑うと、敦はまた室ちん、と拗ねたような声を出した。大型犬の飼い主の気分。敦は単純で、だからカワイイ。
「何?」
「なんかヤな感じ」
「何が。オレが?」
「室ちん構ってくんないし〜」
「なら構ってあげる。おいで、敦」
「ええ〜」
やる気出ない、ぶーぶーと文句を言う敦に、バスケはもうしないからと苦笑した。それでも地面に手をついていた敦はそれを聞いて直ぐ様嬉しそうに立ち上がって、その辺に広げていたお菓子をまとめて自分の袋に突っ込んだ。少し前にお菓子はいいけどゴミを放置する子は嫌いだな、と言った一言がずいぶん聞いているらしい。敦からお菓子を取り上げることはなんとなく気が進まないので、体調管理云々や後のことはまあ良しとしよう。
ぱたぱたと駆け寄ってきた敦の頭をぽんとひとつ叩いた。首をかしげる敦は本当に大型犬のようで、また笑ったら拗ねるんだろうなと思ってそのまま「ご飯でも食べに行こうか」と同じように首をかしげた。きれいな淡い紫色の髪に触れる。
うん、と頷いた敦の指先にキスを落として、カバンをもってふたり、誰もいない公園から駅前に向かって歩き出した。
限りなく世界は優しい
(さてと、何食べようか)
(チーズフォンデュ食べたい)
(昨日食べただろ。ワガママばっかりいうとマジバにするぞ)
(室ちんだってそればっかりー!)
TITLE:宇宙の端っこで君に捧ぐ