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真っ青な空。ああ、今年もこの季節がやってきたと黄瀬は目を細めた。幾度となく眺めてきた景色だ。守ってきた街だ。多少の変化を遂げ、周りを囲む顔ぶれは変わったけれどそれでも何よりも、そう、故郷よりももう大事な場所だった。 「―――黄瀬クン」 そんなここで一つだけ更に変わらないものが、自分を見つめている。 随分とでっかくなったなあと思う。最初会った頃はちょこまかと足元をうろついて、いつ傷つけてしまうかとおっかなびっくりのこちらをお構いなしにすねによく蹴りかかられたものだ。あの頃足にはしょっちゅう青痣が付いていた。 「その呼び方は止めろって、言った」 言い含めるようにことさらゆっくり呟くと盛大に眉をしかめて歩み寄られる。重なる影。年を取るはずだ、あの子がこんなにも大きくなって腰に手を回して抱き寄せてくるなんて絶対に予想できない未来だった。ただその温もりを受け取るには彼と自分の間には色んな事が多すぎる。それらを考えてしまって相変わらずその熱をぼんやりとしか受け取れない様を歯痒く思ったのか目線を逸らしぶっきらぼうに呟いた。 「…身長、190だったぜ」 約束忘れたとは言わせねえ。 改めてこちらを見遣るその瞳。 これだけは。 あの頃と変わらない、俺の、こころの奥を射抜く、まっすぐな光。 苦笑するしかなくて不意に手を掴んで顔を寄せた。 「…ッ」 「顔真っ赤」 口惜しそうに睨む顔は10年以上も見慣れた、愛しい表情だった。 そんなんでこれから俺と生きていくなんて大丈夫? 小さく笑う俺に火神が覆い被さるまで、あと5秒。
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