「永遠なんてものはないのだよ」
うっすらと汗を滲ませながら言うそのセリフは卒倒しそうなぐらい嫋やかだった。
恋人同士ですることも友達同士ですることも親子ですることも、わたしたちは全てやり尽くしたのだった。いかにしてお互いの傷を舐め合い、癒すか、ということに尽力した。結局辿り着いたのは恋人でも友達でも家族でもなかったし、ただ肝臓を痛めつけるだけの行為だったけど、それでもわたしたちは二人でそうしているだけで、お互いの、痛みや苦しみに耐える顔、気絶したぐったりとした体に、途方もなく安堵するのだ。
ただ瓶のなかの小さな丸い錠剤を、気が済むまで口に放り込むだけ。とても単純で、複雑だった。
「天国も地獄もない。神も仏も、善も悪もない」
横たわってうわ言のようにつぶやきながら、やがて彼は目を閉じた。呼吸が荒くなってきた。わたしも朦朧とする意識のなかで、必死にミネラルウォーターを飲んでいた。
縋り付くように飲んでいた。彼も、祈るように、左手を右手で包み込み、足を折り、背中を丸める。
「この指は、ただの指だ」