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とにかくアルバに会わなければ。
会って昨日をなかったことにしなければ。
まだ間に合うと、大丈夫だと、そう信じて立ち上がった。
それなのに、アルバがいない。
いままでおれが機嫌を悪くしていれば渋々といったふうに様子を窺いに来たはずが、名前を呼んでも喚き散らしてもアルバは姿を現さなかった。
最低限の荷物だけもって船を降りたとペンギンが息を吐き、夜のうちに船を出して逆海流で島を離れたらしいとベポがうなだれる。
嘘だ。
そんなのは嘘に決まってる。
だってアルバの右腕は確かにここにあって、こんなにも温かいじゃないか。
それなのにどうして。
どうして、船のどこを探してもアルバが見つからない?
ぞわぞわとした悪寒に全身の力が抜けて、抱えていた右腕がぼとりと床に落ちる。
船長、と頭の中でアルバが囁いた。

『船長、船長は、おれのことどう思ってるんですか』

おれはお前が、お前のことが、お前なんか。
きらい、違う、おれはただ傍にいてほしくて、それだけだったのに。

痛い。
痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い、くるしい、心臓が、いたい!

服の上から掻き毟るように胸を抑えるが痛みは一向に治まらない。
酸素を求めて口を開いても押しつぶされたように喉が絞まっていて息ができなかった。

いたい、心臓が、
しんぞうを、とめないと。

「ハァッ、は、ぁ、ーーー"メス"!!」

不安定に広がるサークルの中で心臓を取り出す。
これを。
この心臓を潰してしまえば痛みも苦しいのも全部消えるはずだ。
はやく、耐えられない、これ以上は、もう。

「船長!なにやってるんですか!!」
「ッぐ」

激しく脈打つそれを床にたたきつけようとした瞬間、クルー達に拘束され手中から心臓を奪われた。
後ろ手にねじ伏せられ口内に胃酸の味が広がる。
かなり強い力を込められているのだろうが、不思議なことに身体にはなんの感覚もない。
ただひたすら、心臓が痛いだけ。
虚ろな瞳のまま通路に視線を這わすと少し離れたところにアルバの右腕が落ちていた。
脳内に再度アルバの声が響く。

『船長はおれのことどう思ってるんですか』
「……アルバ」

あの右腕から聞こえるからだろうか。
現実に聞いたものより随分と優しげなアルバの声。
その声に誘われるようにして、おれは意識を手放した。
瞼の裏でアルバと目が合い、自然と唇の端が持ち上がる。
だいじょうぶ。
大丈夫だ。
アルバはまだ『ここ』にいる。
こうしておれに質問して、やりなおすチャンスをくれている。



『好きですか、嫌いですか』



アルバ
おれは、おまえを