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「標的を絞らない無差別攻撃ならあるいはと思ったんだが」
「予想通りだろ、銃撃戦の中に放り込んでもでも無駄だったんだから」
「こいつ戦場に送ったら一瞬で平和になるんじゃね?」

「……おい、一つ聞いていいか。ていうか聞くぞ、絶対に聞くぞ」

笑いすら聞こえてくるほど和気あいあいと話を始めた三人に不機嫌を顕にしていると隣からホルマジオがひょいと頭を出してきた。
この状況で簡単に話に割って入ることができるのはひとえにホルマジオの性質のおかげだろう。
俺ならとりあえず空気読めってなことで一人一発ずつぶん殴ってる。

「こいつを殺せないってことはわかった。さっきのこともあるし一週間色々やったっつってたからな、その間に殺せるなら殺してただろうよ。けどな……ソルベ、ジェラート、なんだその荷物はよォ」

ブラーヴォ、ホルマジオ。
俺もそれが聞きたかった。
乱入してきたソルベとジェラートの腕には非常識な大きさの紙袋が抱きかかえられている。
どのくらい非常識かというと正面から見て人間の部分よりも茶色い紙袋のほうが割合を占めているくらいだ。
ちらりと覗くアッチューガやトマトからして中身は十中八九食材だろう。
むさくるしい男が二人で仲良く市場を制圧しているところなど想像したくもないが。
丁度昼飯時とはいえそんな大量の食材を一体どうするつもりなのか。
ソルベがちょくちょく料理をしているのは知っているがあくまでも二人分、ジェラート以外に食べさせるところなんて見たことがない。
まさか俺たちに振舞おうなんて殊勝な心を持ち合わせているわけでもあるまいと猜疑の目を向けると、普段なら何も言わずに速攻でナイフなりスタンドなりを出してくるソルベが妙に柔らかい表情で

「いや、レオ……こいつが本場のパスタ食ってみたいって言うからプッタネスカ作ってやろうとおもってな」

と抜かした。
吐きそうになった。
同時に同じことを考えたらしいホルマジオが隠すこともなく全力で引いている。

「ソルベってマジでそっち系だったのか」
「それは今更だから驚かねぇがジェラートは?浮気公認かよ」
「男同士でしかも3Pとか高度すぎるぜ」
「違うっつってんだろーが!何べんも同じこと言わせんじゃねぇぞヘドぶちまけてぇのか?ああッ?」

イルーゾォ、ギアッチョ、メローネの言葉に反応したソルベが袋を投げ出した瞬間全員が身構えるも、何も起きない。
袋から転がりだしたトマトを東洋人の男――レオだったか?が一つ一つ拾い上げて袋に詰めなおし重たそうに持ち上げようとしてから断念するまでの間静寂が続き、ソルベは叫んだ。

「……スタンドだせねぇ!」

チーム全員分の視線が一点に集約される。
注目された理由を知ってか知らずかへらりとマヌケな愛想笑いをかますレオ。

「まあ、とにかくそういうことだ」

もう何もかもを投げ出したらしいリゾットが面倒臭そうに無理やり締めくくったが、なにがどういうことか。
とりあえずわかったことと言えばこの男がいる限りアジトでのいざこざがとても小規模になるだろうということだけだった。