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「何考えてんだプロシュート!老化のせいで骨折でもしたら仕事に支障どころじゃすまねぇぞ!」
「悪かったっつってんだろうが。終わったことグチグチ言ってんじゃねぇよ男がよォ」

老化から回復して真っ先に掴みかかってきたホルマジオをあえて避けず大人しく捕まってやる。
一応本気で悪いとおもっているのでこの程度なら許してやろうという心遣いだ。
まあ殴られたりしたら殴り返すしスタンド出されたらもう一度老化させるが。

「お前だって不安になるだろ、自分のスタンドが出せなかったら。自分自身に異変があるのか、それとも対象が『部屋全体』だからなのか気になってよぉ、そしたら他の奴に試したくなるだろうが」
「つまりどういうことだ」
「近づいてきたお前が悪い」

テメェ、と拳を握ったホルマジオが一呼吸の間をおいてその力を抜いた。
深いため息とともに怒りが吐き出されていくのが感じ取れる。

「……駅前のジェラテリーアでノーチェとティラミス」
「si-signore」

氷菓子の一つ二つで納得するとはなんて安い男だと笑いながら内心でホッと息をついた。
ホルマジオはチームの中でも一、二を争うくらい冷静な奴で、だからこそ俺はホルマジオで試したのだ。
これがもしギアッチョだったりしたら今頃言葉を交わすことなく本気の殴り合いの最中だろう。
しかしそれにしても。

「グレイトフル・デッドは出せる、俺がオカシイわけじゃあない……ってことは原因はそいつか?危害を加えられないってのはそういうことなのか?」

リゾットの隣で小首を傾げる東洋人を初めて視界に収めまじまじ観察する。
少々顔の整った普通の男。
印象はそれだけだった。
人殺しや麻薬なんてニュースの中の出来事だと思っているような、悪いことっていったら万引きかネコババくらいしか思いつかないくらいの一般人の目だ。
限りなく普通で、普通だからこそとてもおかしい。
なんの裏もない一般人がギャングの、それも暗殺者チームのアジトに連れてこられ探るような視線を受けてなぜ平然と立っていられるというのか。
さっきリゾットは殺しの現場を目撃されただの俺たちのスタンドを知っているだのと言っていたがそれが全て本当で、そのうえ一切攻撃が通用しないとなると俺たち暗殺者にとってはとんだアン・ラッキーパーソンである。
こちらの会話を聞いていたらしいメンバーが各自体勢を整え警戒する中、車の音が聞こえてきてきたとおもうと荒々しく扉が蹴り開けられた。
メンバー全員物の扱いがいいとはいえないため建てつけの悪くなってきた扉が嫌な音を立てる。

「よ、終わったか?」
「この様子じゃ、失敗みたいだな」

激しく壁にぶつかり反動で跳ね返った扉の隙間から現れたのは事の発端とも思えるソルベとジェラート。
本来なら文句の一つくらい言うところだが、今回に限って中途半端に開いた俺の口から罵りの言葉が出てくることはなかった。
後ろから小さく「なんだぁ?」という声が聞こえたので、二人の姿に異常を感じたのは俺だけではなかったのだろう。
まったく、今日はどうにも普通じゃない。