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「おかしなことばかりで気付かなかったが確かに変だな。だがこんな危険とはこれっぽっちも関係ありませんって顔した奴が裏の人間だとも思えねぇぜ」

気付いたことを話すとソルベが男の顔をまじまじと見た後ゆっくり煙をはいた。
ソルベの言うとおり煙草の煙が直撃し顔をしかめて咽る男はどこからどうみても一般人に違いない。
しかしこの男が一般人かどうかというのは二の次だ。
知られるとまずい情報――特にスタンドの能力を知られているのはまずい――を持っているのが確実で更に口封じの方法がわからない。
これは由々しき事態である。

「そういえば何もないところから現れたと言っていたな」
「ああ、テレポートでもしたみたいに突然空中から出てきた。十中八九スタンドの能力だろう。何が起こったかわかってないって感じだったから自分の意思じゃなく他の誰かに飛ばされたんじゃねぇか」

今は逃げる様子もなくジェラートの隣に座っているが出会いがしらは相当暴れたらしい。
先ほどまで泣いていたのはその名残だそうだ。
まあ目の前がいきなり殺人現場じゃあパニックになるのも仕方のないことだろう。

「カバンも何も持ってないし、言葉も通じない。あんなわけのわからん登場じゃなきゃ身ぐるみはがされた不運な観光客なんだが」
「それだ忘れてた!」

毒の入っていないマトモな板チョコを齧りながら俺とソルベの会話を聞いていたジェラートが立ちあがってこちらに近寄ってきた。

「リーダーあんた英語喋れただろ、ちょっとこいつと話してみてくれよ!」

なるほど、スタンドが効かないのでは俺が来たところでどうしようもないだろうと思っていたがそういうことか。
言葉も暴力も通じないのでは解決のしようがない、どちらか一方だけでもなんとかしようと。

「こいつ英語はわかるのか」
「知らねぇけど英語は世界の共通言語だぜ?わかるだろ」

不確定なことのために呼ぶんじゃないといいたかったがこれ以外できることがないのも確か。
自分は喋れない癖に自信満々なジェラートに腕をつかまれ、俺は初めて男と向き合った。
なんらかの空気を感じとったのか自ら起立した男は思ったよりも高身長だ。
高身長といっても東洋人にしてはというくらいで実際は俺よりリンゴ一つ分くらいは低い。
筋肉もある程度ついているようだが顔は平坦であどけなく、年齢はまったく予想がつかなかった。

『……おいお前、俺の言っていることがわかるか?英語がわかるなら返事をしろ』

俺がこいつの立場なら理解できても知らぬ顔で貫き通すだろうが、と考えながらできる限り簡単な単語で問いかける。
男は相変わらず、嬉しそうにこちらを見つめていた。