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「思ったんだがよォ〜、殺す方法ってのはなにも『与える』だけじゃあない。そうだろう?」

くるくるとフォークにパスタを巻きつけネズミか何かみたいに頬にため込む作業を繰り返し行うレオをもの珍しそうに眺めていたメローネがふと思いついたように口を開いた。
他は各々自分のスタンドの具合を確認してから散っていったが、メローネだけは『血』を採取できないとわかってからもレオの真正面に陣取っていたのだ。
時折気遣うように差し出されるプッタネスカの皿を断りながら穴があくほど見つめて出た言葉が殺す方法であることに意味もなく安堵を覚える。
俺やソルベやジェラートは、おそらくこの一週間で疲れすぎたのだろう。
もうレオを見ていてどうやって殺してやろうかなんて考える気も起きない。
俺はあくまでどうやって飼いならせばいいかという方向にシフトしただけだが、二人組はすでにかわいいペット扱いをしているのがまるわかりだ。
レオに「ぼーの」とたどたどしく伝えられるだけでデレデレして、気色悪いことこの上なかった。

「リーダー?おいリゾット、聞いてるのか?」
「ああ、聞いている……『与える』だけじゃないってのはつまり、『与えない』もしくは『奪えばいい』ってことだな」
「Giusto!つまり不思議なんだが、あんたらどうしてこいつにエサなんてやってるんだ」

餓死させりゃいいだけの話じゃねぇかともごもご口を動かすレオの頬を指でつつくメローネに妥当な疑問だと小さく頷く。

「メローネ、人間ってのは身体の60%……つまり半分以上は水でできている。それは知ってるか」
「まあそのくらいは常識だな。それがどうした」

メローネの言う『常識』を知らなかったらしいジェラートが感心したように「お前知ってたか〜?」とレオに話を振っていたが当然のごとくレオにイタリア語は通じない。
首を傾げる動作を勝手に知らないものと解釈され馬鹿扱いを受けるレオに少しばかり同情しながらメローネとの会話を続ける。

「水は補給しなきゃ無くなる。汗や尿も勿論だが、呼吸や皮膚からの蒸発だって避けられない。水がなければ普通の健康な人間で持って一週間ってとこだろう」

レオには、出会ったときから一週間食事はもちろん水一滴すら与えていなかった。
飲み食いもせず、排泄もせず、睡眠の妨害も行ってなお衰弱した様子のないレオに健康面からの攻撃は無意味と判断した結果の今だ。
もしかしたら食事できないのではないかとも思っていたがうまそうに指についたパスタソースまで舐めているところをみると嗜好品としての価値はあるらしい。

「へェ、なら一週間色々試したってのはそういうのも含めてってことか。そりゃすごい!」
「すごいのは確かだ……厄介なことにな」
「どうにもならないなら気楽にいこう。とくに、教育はおれに任せておけば問題ないッ」

難しい顔をしていた俺に気安い言葉をかけてくるメローネは、一応気遣ってくれているつもりなのだろう。
しかしその提案が不安でしかないのは、おそらく俺の気のせいではない。

「レオッ!レオーッ!食事が終わったらお勉強の時間だ、一緒に頑張れるな〜?」

山盛りだったパスタをすべて平らげたレオが名前を呼ばれてメローネを見上げる。
メローネのレオを見る表情がどう頑張って解釈してもベイビィ・フェイス――息子を育て上げるときのものと同じであることに頭痛を感じて俺は眉間に指をあてた。