「やめてください目視可能な距離に近寄らないでくださいていうか死んでください」 「なあなんで近寄っちゃだめなの?なんで?俺何かした?」 散歩の途中、俺の姿を見るなり隠す様子もなく顔をしかめて踵を返したジンを追いかけ理由を尋ねる。 いつも不機嫌そうなジンだけど、こんなあからさまに避けられることなんて今までなかった。 鈍いって言われる俺のことだからきっとまた知らないうちに何かしてしまったに違いない。 「ジン、なあジンってば」 理由を聞いて謝らなくちゃ、と先回りしてジンの顔を覗き込むとジンはカッと目を見開いて俺の首元を掴んできた。 苦しくはないけど中腰がしんどい。 言ったら怒られるだろうなというのはなんとなくわかったので笑顔でごまかしながらそっと手を外す。 殴られた。 なんでだろう。 「何かしたかって?したよ!お前が原因の俺の死亡回数がついに三ケタ越しやがった細心の注意を払ってるから他の奴に殺られたり自分でミスったりはしてないのに、ランピー!お前だけで三ケタだ!三ケタって百回だぞ!?しかも全部過失でお前は気付きもしないときたいい加減にしろよマジで少しくらい罪の意識に苛まれろよっつーか死ね一万回死ね!」 早口でまくしたてるジンの言葉にふむ、と首を傾げる。 よくわからなかった。 が、とにかくジンは怒っているようだ。 怒っているときはおいしいものを食べるのがいい。 「そうだ、ご飯食べにいこう!俺車だすから!」 「お前どういう思考回路してんだランピーと車に乗ってメシとか死亡フラグ乱立じゃねぇか絶対ごめんだぞやめろ馬鹿こら!!」 せわしなく足を動かして逃げだすジン。 ジンはすばしっこいけど背が低いので(というか俺の背が高いので)コンパスの差で簡単に追いつくことができる。 ひょいと抱えあげて車に向かうとジンはひとしきり暴れて罵声をあびせたあと何かを悟ったように力なくうなだれた。 「……ねえ本当に死んでくださいよ一人で」 「嫌だ。ジンと一緒にいたいもの」 お前といると碌な目にあわない。 そう言って顔を歪めるジンは確かにいつも碌な目にあっていない。 それはつまり、ジンがいつもなんだかんだで自分と一緒にいてくれているという証明だ。 嬉しいなぁ。 「ジン、ずっと一緒にいようね」 「ランピーといたら俺すぐ死にますから一緒もへったくれもないですよクソが」 (ならいっそ二人で、) |