最近ダンデがふっくらしてきた。 ふっくらといっても元が引き締まり過ぎというくらい仕上がっている身体だったのでパッと見ではわからない程度だ。 そんなわずかな変化にどうして気づけたかというとまあ見るだけじゃない関係だからとしか言いようがないのだけれど、とにかくここ一カ月ほどでダンデの肉付きが良くなったのは確かである。 そしてオーナーになってデスクワークが増えたとはいえそんな急に太りだすものかと気になって調べてみると、ダンデの執務室に置いてある紅茶用の角砂糖の減りが異常に早いことに気が付いた。 ダンデが紅茶に入れる砂糖はいつも一つのはずなのにこれはいったいどういうことなのか。 「ーーって思って職員の人にお願いしてこっそり覗かせてもらってたわけ」 「ジョウゴ、あの」 「謝らなくてもいいよ、別に悪いことしてたわけじゃないんだし。でも健康のこと考えたらよくないのはわかってるよね?」 「……すまない。わかってはいるんだが止まらなくて」 だから謝らなくてもいいんだってばと苦笑するおれに叱られたワンパチみたくしょんぼり項垂れるダンデ。 書類に目を通す間まるでお菓子をつまむような感覚で角砂糖をがりがりかじっていたダンデが二つ三つと慣れた様子で口に運ぶのを扉の隙間から確認して部屋に乗り込んだらこれだ。 本人的にもあまりよろしくないことをしていた自覚はあるらしい。 わかっていても食べてしまうというのは、やはりストレスのせいだろう。 十年間チャンピオンとして君臨し続けた男とはいえチャンピオンのときとは環境も仕事内容もまるで違うのだから当然と言えば当然だ。 仕事を手伝うことは出来ないがせめて口寂しいのとストレスが少しでも緩和されればな、と肩を落としているダンデの頬を両手で包んでちゅっとキスをするときれいな金色の目が見開かれ、落ち着かない様子で視線を彷徨わせたあとキスしたばかりの唇が開いた。 「その……角砂糖なんだが、だいたい一度に十個は食べてた、から」 なるほど。 角砂糖は十個だったからキスもあと九回ほしいということらしい。 明らかに食べ過ぎな量を自己申告したのが恥ずかしかったのかそれにかこつけてキスをねだるのが恥ずかしかったのか手に包んだ頬が熱くなっている。 砂糖と違って体に悪いわけでもなし九回だけといわず何回だってかまわないのだが、しかしうっかり盛り上がって仕事ができなくなってしまう可能性を考えると砂糖よりキスの方がたちは悪いのかもしれないな、なんて。 |