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ジムリーダーをマリィちゃんに譲ってこれで少しはネズの負担も減るのかなと思いきや最近のネズは今まで以上にばたばたと忙しそうにしていた。
ほぼスパイクタウンだけで活動していたこれまでと一転して各地を飛び回り、曲を作り練習し、ライブの予定やアルバムの打ち合わせをし、ミュージックビデオの収録にCMや広告の撮影、音楽番組への出演、ポケモンの世話にトレーニングまでこなして更にジムリーダーとしての自分の経験をマリィちゃんに伝えて運営の相談にのってあげているというのだからそりゃあ忙しくもなるというものだ。
息抜きに出かけてもなにかしらのトラブルに巻き込まれたりしているようだし、これじゃ気の休まる暇もないだろう。
そんなネズに対し恋人の俺にできることといえば部屋を片付け栄養のある食事を用意しベッドを整えて出来る限り落ち着いて過ごせるようにしておくくらいである。
本当はもっと二人でいちゃいちゃする時間がほしいのだけれど疲れているネズにそんなわがままな要求をするわけにはいかない。
そんなこんなで今日もまた掃除と洗濯、ベッドメイクを済ませ帰宅したネズに温めた料理を出して早々に帰路につこうとしていたのだが、玄関に向かったら扉の前でタチフサグマに立ち塞がれた。
俺より小さいはずなのに威圧感がすごい。
全然通れる気がしない。

「あの、ネズ?玄関にタチフサグマがいて帰れないんだけど」
「……はあ。それが?」
「それがって」
「帰れないなら泊まっていけばいいんじゃねぇですか。明日予定ないって言ってましたよね」
「えっいや俺はそうだけど、でもネズは明日も仕事だろ?昼から打ち合わせだって」
「昼までは、フリーだ、って言ったんですよ、オレは」

廊下から声をかける俺に視線を向けることなくシチューをすくっては口に運んでいたネズにため息とともに「察しの悪い野郎ですね」と吐き捨てられ思わず玄関のタチフサグマを見やると、タチフサグマは黙ってさっさとそばに行けというようにクイと顎でダイニングを示した。
男前だ。

「あー……もしかして、寂しかった?」
「……そう思うならハグの一つぐらいしやがれってんですよ」

ハウスキーパーじゃあるまいし家事だけやってすぐ帰る恋人がどこにいるんですありがたいけど全然嬉しくないですよと愚痴るネズをはいはいごめんねと抱きしめて軽いキスをする。
と、離れた瞬間ぐいと襟元を掴まれじとりと睨み付けられた。

「昼までフリーって言った意味はわかってるんでしょうね」
「……シャワー浴びてきます」
「よろしい」

もう帰ろうとしないし恥ずかしいからタチフサグマはボールに戻しておいてあげてね。