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キバナはいまとても機嫌が悪かった。
この半年ほど続いた勝負の負けを認めたせいである。
一度は告白を断ったキバナに絶対に惚れさせてみせるからチャンスをくれと言って諦めなかったジョウゴ。
絶対になんて強い言葉を吐いたくせ駆け引きも戦略もなく真っ正面から好意を示し続けただけのジョウゴに、キバナは負けた。
最初はなんとも思っていなかったのに些細な言動にドキドキしてかわいいだとか愛おしいだとか言われると胸がむずむずふわふわして、付き合っていないのだからと過度な接触を避ける律儀なジョウゴに『触れてもらえない』と感じるようになってしまった。
負け試合の後もSNSに自撮りをアップするおかげでよく誤解されるのだが、実際のところキバナはとてつもない負けず嫌いだ。
長年挑み続けているチャンピオンダンデだけでなくどんな些細な勝負、どんな相手にだって負けたくないと思っている。
それが二度めだというのに初めて言うみたいに緊張し切った真剣な顔で「好きです。付き合ってください」と告げるジョウゴにイエスを返さざるをえなかったときの悔しさときたら。
好きになってしまったものはしかたないとはいえ思い出すだけでむしゃくしゃした気分になってくる。

「キバナ、本当に無理してないか?そりゃあ俺はお前のことが好きだしチャンスがほしくて食い下がりもしたけど、同情で付き合う必要はないんだぞ?」
「……一度振った相手と同情で付き合うわけないだろ」
「いやでも」
「まんまと惚れさせられたのに腹が立ってるだけだよ。負けた記念に自撮りしておきたいくらいだ」

頭の後ろで腕を組んでなんで好きになっちまったんだかと悪態をつくとそれを聞いたジョウゴがホッとしたように苦笑した。
キバナが無理をしてオーケーしたわけではないと知って嬉しそうにするジョウゴにむずかゆくなって、そんな自分にいらいら、いらいら。
好きな相手と付き合えるのは喜ばしいことのはずなのに全然素直に喜べない。
こんな自分のどこをかわいいだなんて思えたのやら。

「惚れたら負けっていうなら俺の方がダントツで負けてるんだからさ、そんなに怒らないで」

好きだよとストレートに差し出される言葉に心臓がきゅうと縮む。
むずむず、きゅんきゅん、ふわふわ、いらいら。
ああ、なんて腹立たしい!