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「なあ、今日ネズは面倒見がいいって話聞いたんだけどマジ?」

おれの唐突な質問に来年開催する予定のライブイベントの資料を読むのを中断して顔を上げたネズが、ああ、となんでもないことのように頷いた。

「これでもアニキだからね。厄介ごとも鬱陶しいやつも嫌いだけど放っておけないと判断した場合は面倒くらいみますよ」

一見至極当然の説明だ。
しかしおれにとっては嘘か冗談にしか聞こえなかった。
だってネズ、おれに面倒見させるの大好きじゃん。
夜中にアイス食いたいって言い出して買いにいかせたり曲作りの最中に「ん」って一言でコーヒー要求したり風呂からびっちゃびちゃなまま上がってきて「さっさと乾かしてくださいよ。風邪ひくじゃねぇですか」って理不尽にキレたりが日常茶飯事じゃん。
それなのに面倒見がいいとか絶対おかしいだろう。

「いやいや、ネズは面倒見るより見られる側だろ?」
「そりゃあ、お前は世話焼きたいタイプだろうなと踏んでキャラ作って近づいたんで」
「はあ!?おれ好みの甘やかしがいのあるやつだと思ってたのに最初から全部演技だっただと……!?」
「あまりに気づかれないんで俳優でもやっていけるかもって自信がつきましたよ」

ちょろすぎて正直途中で心配になったよねとなんのてらいもなく衝撃の暴露をしてくれたネズにマジかぁとため息をついて肩を落とすと「嫌いになりました?」と尋ねられた。
確かにキャラ作ってたって聞いてショックではあったけども。
そんな、ちょっと不安そうに聞かれて嫌いになんてなれるか馬鹿やろう。

「くやしい……でもかわいいから許す……」
「そういうとこですよ。本当にちょろい」
「許すけど今度からたまにはおれにも面倒見のいいネズ見せてくれ。ネズに世話焼かれてみたい」
「はあ、まあ半世紀に一度くらいなら見せてやってもいいですけど」

さらっと五十年そばにいることを前提に話してくるネズに対し特につっこみを入れずに当たり前という顔で「それじゃあ気長に待つかな」と返すと少しの沈黙のあと「態度次第では四半世紀に一度にしてやってもいいですよ」と謎の譲歩をしてもらえた。
信頼度が上がったっぽくてうれしい。

「思わぬところで人生の楽しみが増えたなぁ」
「大袈裟な野郎ですね……まあそれまでせいぜいがんばってオレの世話焼いてください」

もっと甘やかしてくれてもいいんですよってお前もうそのキャラ作り素になってるだろかわいいな。