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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「駄目だ疲れた、俺はもう駄目だ仕事やめるもういかない」

家に帰ってきて第一声でそう言ったらじと目で見られた。
誰にって、プクリンに。
嫁じゃないのかって?馬鹿いうなこのご時世その日暮らしのしがないサイキッカーに嫁ぐ女がいるか。
俺が悪いんじゃあない悪いのは世の中だ。

「やめろ、そんな目で見るな」

瞬き一つせず見つめ続けるプクリンは曾曾爺さんが子供のときから家にいるポケモンで、一人暮らしをする際に絶対条件として親父から譲渡された。
しかしながらなんというか、怖い。
普通プクリンってもっとこう、半笑いっていうの?にこにこしてるものだろう。
こいつ、真顔。
それにプクリンの平均寿命が何歳なのかは知らないが曾曾爺さんの時代からって明らかに生きすぎてるし、なんか悟ってる感じがして苦手なのだ。
見つめられると足の裏がむずむずする。

「大体さあ、ちょっとやそっと超能力もどきがつかえたところで見世物になんてなるはずないんだよ。エスパータイプのポケモンが一匹いるだけでもっとすごいショーができるんだから。人間の出る幕なし、つまり俺不必要。肩身狭いし客の目も冷たいしもう嫌だ。畑耕して自給自足する。もう人前に出ない。ずっと一人で生きていく」

そう言い切った俺に初めてプクリンが動いた。
動いたといっても目にもとまらぬ速さで動いたうえに目の前に来ても姿勢が変わってないから
どっちかっていうとテレポートしたっぽ……あれ?
うちのプクリンテレポートおぼえてないよね?
譲られたときは『うたう』『おうふくビンタ』『のしかかり』『はたく』だった。
で、俺わざマシンとか使ったことないし今一体レベル何なのかわからないけど自力修得できないわざを使えるはずがない。
もうなんなのこの子、謎が多すぎて頭パンクしそう。
そんなことを考える間にもうすでに五、六回ははたかれてる俺。
この衝撃で超・超能力開花しないだろうか。
うん、でも、いや、本当――

「痛い痛いよ痛い!!わかったってちゃんと仕事行くって!頑張るからやめ、いたい!」

避けようとしたら頭だけでなく顔にも何発かビンタをくらう。
いたい。
ジンジンと熱を持つ痛みにまぎれて俺は泣いた。
仕事とか人間関係とか寂しさとかプクリンのぬくさとかに色々泣いた。
とりあえず家に帰ってきて愚痴れる相手がいるだけ俺は幸せなんだろう。
弱音を吐いたらこうして怒ってくれるし、歌声微妙で超小声だけど抱いて寝たらどんなときでも寝付き最高だし。

プクリン怖い、でも、いてくれてよかった。