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「#幼馴染」のBL小説を読む
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ジョウゴの手持ちであるグソクムシャがまだ小さな野生のコソクムシだった頃、コソクムシにとってのごちそうはビーチに落ちているゴミであり宝物はたまに見つける白い玉だった。
ビーチにいる人間の話によるとつやつやと輝く白い玉は『シンジュ』という名前の『ホウセキ』らしく、石ころと同じで食べてもお腹は満たされない。
けれどシンジュは石ころと違ってとてもきれいだから、コソクムシはそれを巣に持ち帰って大事に大事に貯め込んでいた。
光の届かない暗い穴の中ではつやつやが見えないのが残念だったが、食事の合間に集めたそれが巣の中にたくさんあることは自分が一番よくわかっていたからコソクムシはそれだけでじゅうぶんに満足していたのだ。
しかし、そうして蓄えた宝物はある日突然巣を破壊して入ってきた人間の手にそのほとんどを持っていかれてしまった。
残ったシンジュも新しい巣に移動させる際にヤミカラスたちに襲われ、つつかれて裏返しにされた隙に奪われてしまい、結局コソクムシには何も残らなかった。


「おい――あっ、おいコラ逃げんな!これお前んだろ!?」

一粒だけ、ジョウゴがヤミカラスたちから取り返してくれた、傷だらけのシンジュを除いては。




あれから数年。
ジョウゴのもとで進化を果たした元コソクムシ、現グソクムシャにとってのごちそうはジョウゴがグソクムシャのために用意してくれたポケマメであり、焦げ付いた手作りのポフィンであり、一緒に食べるマラサダだ。
食糧探しにビーチを走り回ることが無くなったためシンジュを集める機会もなくなってしまったが、あのときにとりかえしてくれた一粒はいつでも見れるようとジョウゴが家に飾ってくれているのでグソクムシャは今もやっぱりじゅうぶんに満足していた。
なによりグソクムシャは、シンジュよりずっと素敵で大切な宝物を手に入れたのである。

「グゥゥン……」

低い声で小さく一鳴きしてビーチに寝転がる水着姿の主人を見下ろし、爪でつついて目を覚まさないことを確認すると、グソクムシャは自分の腹の隙間に隠すようにしてジョウゴの上に覆いかぶさりそのままのそのそと丸くなった。
進化して強く、大きくなったグソクムシャから宝物をとりあげようとするふとどき者はこのビーチには存在しない。
だからジョウゴが無防備に眠っていても、こうしていれば安心なのだ。

近くに巣があるらしいかつての同種が見慣れた白い玉を咥えてビーチを走るのを横目に、宝物を腹に敷いたグソクムシャは幸せそうにきゅるきゅると喉を鳴らした。