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「#幼馴染」のBL小説を読む
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スカル団のボスであり、ハラさんに師事した弟弟子であり、三つ年下の幼なじみ。
色々あって現在は同居人という立場に収まった白いもさもさ髪の青年ーーグズマのこれまでの肩書きを思い出し、長かったなぁと少しばかりの感慨に浸る。
グズマは昔から可哀想な子供だった。
悪い人間ではないが理想というフィルターを通してしか自分を見てくれない両親、同世代の中で頭一つ飛び抜けていても一番にはなれない実力、妥協が下手で無理と知りつつ完璧を求めてしまう柔軟性に欠けた性格。
傍目から見ても危うすぎる要素をフルセットで抱えたグズマは、あるときとうとう自棄になって暴走を起こし、師であるハラさんの教えとは真逆ともいえる破壊的な戦い方でもって大会の優勝を果たしてしまった。
そこからだ。
グズマが一気に正道とされる道から外れていったのは。
そんなグズマの後を追ってリリィタウンを出ることを決めた俺をハラさんは渋い表情で止めてくれたけれど、残念ながら考え直すという選択肢は存在しなかった。
幼なじみを見捨てられないとか、そんなお優しい理由での行動ではない。
とある明確な目的を持ってスカル団に入った俺はその後数年、止めることも煽ることもなくただグズマの傍に居続けた。
歪みなく真っ当な道を歩むはずだった俺が自分を追って道を踏み外したことに負い目でも感じているのか、親しげでありながらもどこか腫れ物に触るようだったグズマの態度が決定的に変わったのはエーテル財団の代表と共に消えたグズマを連れ戻すため、敵対していた子供にくっついてUBの巣らしき空間まで追いかけていった後のこと。
「こんなところまで追ってくるなんて馬鹿かよ」と泣きそうな顔で苦笑したグズマは、しかし黙って頭を撫でる俺の手を振り払おうとはしなかった。

グズマは昔から可哀想で、さみしがりな子供だった。
グズマがずっと欲しがっていたものは金色のトロフィーでも賞賛の声でもなく、どんな自分でも受け入れてくれる優しくて甘ったるい存在だったに違いない。
だから、渇望しつつもそんな都合のいい人間などいるはずがないと一人がむしゃらに足掻いていたグズマに俺はその身をもって示し続けた。
勝っても負けても『いい子』でも『悪い子』でも関係なく、立場も危険も顧みず傍に居続けた俺という存在を、グズマはついに認めざるを得なくなったのだ。

まだ両親と折り合いを付けられていないため自宅には帰りづらいと言うのに対して「俺の家に住めば?」と提案すればパッと顔を輝かせ、おはようやおやすみ、おかえりやただいまといったごく普通の挨拶のたびに緩みそうになる頬を誤魔化し、今もちらちらとこちらを伺っては頭を撫でてくれる手を待っているグズマに長かったなぁ、と再度しみじみ考え、唇の端を持ち上げる。

「グズマ」
「……んだよ」

おいでと手招きすれば不承不承を装いながらも話をするには些か近すぎる距離まで真っ直ぐ歩み寄ってきてそわそわと身体を揺らすかわいそうでかわいいグズマ。
期待通りに頭を撫でて、頑張っているねと、お前はもう一人でも大丈夫だねと笑って、そうして近々単身でカントーへ渡るつもりでいることを告げてやったら俺に依存といっていいレベルで心を許しきってしまっているグズマはいったいどんな表情を見せてくれるのだろう。

壊すためだけに愛した結末は、もうすぐそこまで迫っている。