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いつものちょっとした我儘のつもりだったんだ。
みんなライバルでピリピリとしていて信用できるのなんて吉茂だけで、だからいつものように誘って吉茂はそれを笑って承諾して。
どうして気付けなかった。
吉茂が簡単に自分を盾にする奴だとこの六年で嫌というほど知っているはずだったのに!
頭の中が混乱して手先が震える。
裂いた布で縛り臨時の止血を行っていると吉茂が小さな声で呻いた。

「吉茂!?」
「あー、俺、どのくらい意識落ちてた?」
「数分だ。まだ動くんじゃない」

顔を歪めて上半身を起こし首を振る 吉茂に慌てて手を伸ばす。
意識ははっきりしているようだし傷はそう深くないが油断できないほど出血量が多い。
もう少し場所がずれて首に近い場所だったなら処置する間もなく死んでしまう可能性すらあった。

「すまない、私が変な意地を張らなければ」
「ばーか謝るなって。いままでこんな無茶してまで誰かにプレゼントしたいなんて言ったことなかったろ?」

仙蔵にそんなに大切に思える人が出来て俺うれしいよ。
血が足りず青白くなった顔で笑う吉茂に私は呆然とした。
なんだそれは。
それはつまり、私が吉茂を疎かにしてまで、吉茂が傷を受けることもよしとしてそれでもプレゼント代を稼ぐことを優先したとそう思っているのか?
吉茂の命よりも彼女の好意を得たいと。
そんな。

「違う吉茂、私はっ」
「照れなくてもいいって。でも彼女いろんな人にプレゼントされてるからよほどいいものじゃないと印象に残らないぞー」

そう、そうだ。
彼女は多くの人に愛され様々なものを送られそのたびに無邪気な笑顔で喜んでいる。
私がプレゼントを渡したら彼女は同じように笑うだろう。
それを買う金のために死んだ山賊や私を庇って傷ついた吉茂のことも知らず、ただただ無邪気に。

無邪気に。



「仙蔵?」



愛らしい純真無垢な少女に、ぽつりと染みが浮かび上がった。