「動くって具体的にはどういったことをするんですか?」 「んー?別に特別なことはしないよ。ちょっとした心理戦と情報戦」 大体にして仲間意識の強い奴等だから少し上手く立ち回ればなんてことないさ。 そういって繋いだ手をぶんぶん振り回す吉茂先輩は全体的なゆるさの割りにとても聡くて計算高い人だから、先輩たちの感情が仲間意識の枠に収まらないものだとしっかり理解しているのだろう。 あの人たちの吉茂先輩に向ける感情は俺と同質だ。 恋かと聞かれれば首を傾げるけれど友情というには重過ぎる。 信頼だったり尊敬だったり呆れだったり安らぎだったり。 色んな感情が入り混じった想いは結局のところ一種の愛なのだ。 俺と六年生との違いは、それを受け入れて『一番』を定められているかどうか。 「吉茂先輩」 「なあにー」 「好きです。一番大好きです」 「そう?」 「そうです」 嬉しそうに笑う吉茂先輩を見て俺もにっこりと笑みを浮かべた。 俺の笑顔は吉茂先輩によると「目が笑ってない」らしいが、これもまた先輩曰く「そこが可愛い」らしいので俺はいつも笑っている。 にこにこにこ。 この愛が恋愛か親愛かなんてそんな難しいことはわかりませんが先輩が一番という事実に変わりはないので、新しい事務員さんがこようがみんなが吉茂先輩から離れていこうが俺は今日も笑い続けるのです。 |