みんながあの子に群がるのは長蛇の列に並びたくなるのと同じ原理だ。 一人二人が興味を持てばなし崩し的に、ことが大きいほど列は長くなる。 彼女が来て未だ三日と日が浅いのに噂の中心無視して俺のところに遊びに来る子っていうのは流行物なんかに興味を示さないタイプなんだろう。 「つまり勘右衛門はコンビニの新作が出ても手を出さないで同じものばかり買う人間と見た」 「よくわかんないです」 「わかったらお嫁さんにしてあげよう」 「あはは、頑張りまーす」 勘右衛門が笑いながら首を傾けると、てろりとした髪が肩口で揺れた。 うん、素直で大変可愛らしい。 多分一生意味わかんないからお嫁さんは無理だろうけど。 「ねえ吉茂先輩」 「なんだい勘右衛門」 ぽやんぽやん花をとばして笑っていた勘右衛門に袖を引かれて顔をむけるとパッチリとかち合う視線。 真顔でも笑っていても勘右衛門の目はまん丸だ。 ぬいぐるみに縫い付けられたボタンのような瞳にぼんやりと俺が映っている。 「みんなあの人に夢中です」 じっとこちらを覗きこむ勘右衛門は、前から思っていたが瞬きが少ない。 スローテンポスローライフ、この子は長生きすると思う。 「先輩、悲しくないですか?」 「ないよー?」 みんなあの子に夢中だけど、勘右衛門が残ってくれたから……なーんてことはない。 とられたのがみんなだろうと一人だろうと俺のものをとるなんて許せないに決まってる。 本当にとられたなら、の話だけど。 |