阿呆だなぁ文次郎。 そんな顔をするならどうして吉茂を受け入れなかった。 ふざけている?真剣に見えない? 毎日のようだった夜遊びをやめて文次郎のためなら色の授業を放棄する勢いだった吉茂の本気がわからないはずないだろう。 忍びに愛なんて必要ないだって? あんなに吉茂を目で追って苦しんで、吉茂を見ないように必死で天女さんにひっついてるお前がそれを言うのか。 三禁に引っかかるというなら三禁なんて関係ないくらい強くなればいいだけなのに。 ああ、ああ。 阿呆。 文次郎の阿呆。 馬鹿、阿呆。 こんなことで吉茂を手放して。 二人が幸せなら私は諦めるつもりだったのに自分から離れたりして。 それなら私は今一度吉茂に愛を求めるよ。 放された吉茂を追いかけるのは私の自由なんだから。 放したお前にとやかく言う権利などないのだから。 「吉茂!」 「小平太、文次郎に用事があったんじゃないのか?」 首を傾げてこちらを見る吉茂は、少しだけ寂しそうで悲しそう。 阿呆だなぁ文次郎、なんで追いかけてこないんだよ。 自己完結の馬鹿野郎め。 「バレーに誘おうとおもっただけだからいい。今日はバレーはやめにして吉茂と一緒にいる!」 吉茂は私を一番にすればいい。 私なら、夜遊びはしちゃ嫌だけど授業で女を抱くくらいで拗ねたりしないし、なにより他の奴に目をくれたりなんて絶対にしない。 「俺、文次郎の一直線なところが好きだったんだ」 「私は吉茂に一直線だぞ!」 くすりと笑った吉茂に私もにっこり笑い返した。 (これが幸せだと知っているから) |