×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -




みんな仲良くしてくれていつも周りには人がいる。
けれど、ここはやっぱり現代に比べて刺激が少ない。
パソコンもテレビもないし、本だって小説というよりは専門的なものばかりだ。
もともと読書や勉強が苦手な私はこちらへきて数日ですっかりまいってしまった。
現代が懐かしい。
友達と自由に遊んでいたころに戻りたい。
そうして暇を持て余しているなか長次くんが連れ出してくれた町の中はビルの並ぶ景色とは程遠いけれど森と山ばかりの学園周辺よりよほど賑わっていて、私はその空間が大好きになっていった。
町にいる間、無駄な話をするわけでもなく、それでも私がはぐれないようにと常に気を遣ってくれる長次くん。
もっと一緒に過ごしたいと思い数度目の外出で露店のおじさんから町に行商が来るという話を聞いて、行きたいな、一緒に行こうと誘った。
返事はなかったけど長次くんは普段から無口だし、ここ最近の毎回のお出かけに断られるはずもないだろうと思いこんでいたのだ。
だから、小さな声で「友人と行くことになった」と言われた時には戸惑いを隠せなくて。

(私より優先順位の高い友達って誰?)
(そんな子、私、見たことない)

少し、ほんの少しだけれど確実に感じる不安。
いま素直に手を離してしまったら長次くんは二度と戻ってこないような気がする。

「あ……そっ、かぁ」

けれど明確な約束がなかった以上なんでどうしてと駄々を捏ねるわけにもいかず歯切れ悪く断りを受け入れた。
きっと今自分は酷く傷ついたような、悲しそうな顔をしているだろう。
こんなときいつもならきっと宥めるように頭を撫でてくれただろう無骨な手は伸ばされることなく、長次くんはくるりと背を向けていってしまった。

『友達』って誰なんだろう。
長次くんと一番仲がいいっていったら小平太くんなんだろうけど小平太くんは今日委員会があるって言ってたし、だったら別の人だ。
小平太くんなら三人でお買い物できたのにと目を伏せ、直後浮かんだ名案に私はバッと顔を上げた。
なぜすぐに気付かなかったのか。
そう、別に友達がいるからって買い物ができないわけじゃない。
一緒に町まで連れて行ってもらえばいいのだ!

「長次くん、もう出てっちゃったかなぁ」

ぱたぱたと彼が歩いて行った方向へ駆けてゆき見慣れた後ろ姿を探す。
一日暇になるくらいどうってことないが、なにより彼の『友達』を見てみたいという気持ちが強くて足が速まった。

「あ」

いた!私服に着替えてきたらしい長次くんが長屋の渡りを乗り越えて真っ直ぐ反対側へ歩いていく。
さっそく同伴の許可をもらおうと走り寄ろうとした瞬間、私はぴたりと立ち止まった。



(、え)



長次くんは、笑っていた。
不気味と称されるあの笑顔でも怒っているときの笑顔でもない、ふと口元がゆるんでしまっただけの。




(……え?)




とても自然なそれは、私が一度も見たことがない優しい優しい笑顔だった。