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長次が町に出ないかと誘いをかけてきた。
筆や墨なんかの学用品が必要になったらいつも一緒に買いに行っていたからおかしいことではないんだけど、長次は松芽さんに傾倒しているとばかりおもっていたからなんかびっくり。
俺は少し長次の性格を間違えていたみたい。

長次は、素で二股をかけられる人間だ。
関係性でいえば俺は友達でしかないわけだから厳密には二股ではないんだけど、長次が俺を好きなのは知ってるし。
精神的に駄目だよね、そういうの。
俺愛するなら百パーセントで愛して欲しいタイプだもん。
友情ならともかく他の人に分散された愛なんていーらない。

「んー、ちょっと都合悪いな」
「そう、か」

ぼそぼそと、しかし非常に残念そうに肩を落とす長次に少しばかり胸が痛むが都合が悪いのは事実だ。
ここのところ休みはもっぱら勘右衛門にたかられている。
怪我から復帰したばかりで遅れてしまっている予習復習やトレーニングだってはずせない。
別に約束しているわけではないので勘右衛門と会う時間を削れば買いものくらい問題なく付き合えるが優先順位の差で却下。
だって勘右衛門はかわいいのだ。
昔から他に脇目もふらずなにかにつけ全力でぶつかってきてくれる。
ワンフォーワンなそれは他人から見ると独占欲と嫉妬でギトギトしているらしいが、むしろどんとこい。
俺は重たい愛が大好物です。

「あ、そうだ。松芽さんが暇そうにしてたから連れて行ってあげれば?」

暇そうに、という言葉にぴくりと眉を動かした長次は暫くの沈黙の後こくりと頷いて去っていった。
長次は松芽さんの頑張りやなところが好きらしいから、字もまだまともに読めず落ち葉が大量に落ちている状態で勉強も仕事もしていないことに少し落胆というか裏切られたような気がしたのだろう。
理想と現実の差って辛いものがあるよね。
俺だってカツを称する駄菓子の原料が肉でなく魚だったと知ったときは理不尽な怒りを感じたもの。
肉を使っていないのにカツだなんて、詐欺じゃないか。

まあそれは置いておいて、基本的に食べたいときに食べられないものっていうのは美化と補填でとても良いものに変換される。
が、食べたくもないのに食べるものに関しては飽きと苛立ちが先にくるわけだ。
俺から意識を逸らしている他の奴だと飽きずにハマっちゃう可能性があるけど、長次は俺のことも好きだもんね。
他の奴が耳を貸さない言葉でも、長次の心にはしっかり届く。

ハマらないように毒を教えながら、それでも与え続けましょう。