━━━━ *** 「あれだけ煽っといて、なんやねん。タネがないんやなくて不能なんか?」 何度も何度も唇を重ねて舌を絡め、もはや興奮で乱れる息を隠しもせずその先をねだった直哉を、亮介は本当にどうこうする気があるのかと疑いたくなる冷静さで制止した。 曰くまだ風呂に入っていない。男同士でどうこうする準備も整っていない。はじめて身体を重ねるのに衝動的なことはしたくない。 言い訳ばかり並べて直哉の熱を高めるだけ高め、自分には一切触れさせないまま欲に満ちた時間を終わらせた亮介に思いつくまま暴言を吐く。猫かぶりが知られていた以上無駄に良い子を演じる必要もあるまいと思っているのに声の調子はどうしても媚びるような甘いものになってしまって、何か話すたびにかぶっていた猫がすっかり自分の一部になってしまったらしいことを思い知らされ腹立たしいような心臓がむずむずするような、とにかく歯痒い気分になった。 そんな直哉の内心を知ってか知らずか「ひどいなぁ」とほほえましげに笑う亮介から、次の瞬間衝撃の言葉が飛び出した。 「私は別に不能でもタネなしでもないよ。普通に子供だって作れるしね」 「…………はあ!?」 「ほら、私は自分の呪力でダメージを受ける体質だろう?それで、めんどうくさい当主争いに巻き込まれないための口実を増やしたいと考えていたときにふと思いついてね。検査を受ける前に集中して呪力を流してみたんだ」 その結果見事種無しの称号を得たのだといたずらっ子のように語る亮介にぽかんとしていると「直哉だけだからタネがあろうがなかろうが関係ないけど、不能じゃないから安心して覚悟しておいで」と獰猛な欲をちらつかされ直哉は思わずごくりと唾を飲んだ。 見誤っていたと思いはしたがこれまで信じて疑わなかった叔父のイメージと違いすぎて、それが嫌ではないからこそ自分ばかりが踊らされているようで悔しくなった。 言い訳が尽きたあかつきには絶対に床で一泡吹かせてやる。そうしなければ気が済まない。 ━━そう意気込んでいた直哉が猫をかぶるのも脱ぐのもナマエのほうが一枚どころか数枚上手だったらしいと思い知るのは、後日しっかり心に決めてことに臨んだはずの覚悟すらまとめて蹂躙され心身ともに余すところなく喰らい尽くされた後のことだった。 |