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 普段心の底から笑うってことをあまりしない相澤が俺と二人っきりで飲んで酔ったときに限って本当に楽しそうにケラケラ笑ってふざけたり甘えたり好き勝手に振る舞うもんだから市役所でそれを見つけたとき馬鹿なことを考えてしまった。
 その場の勢いで持ち帰りはしたもののさすがにその考えを実行するほどの大馬鹿ではないため日の目を見ることは絶対にない。が、かといって捨ててしまうのもなんだか嫌な気がしてテレビ台の引き出しに適当に放り込んでいた。もう二年ほど前のことだ。
 すっかり忘れていたそれを勝手知ったる様子でリモコンの電池を探していた酔っぱらいの相澤が発見して手に取った瞬間一気に空気が冷えた。さっきまで緩んでいた顔があきらかに強張っている。こわい。

「……お前、結婚する予定あるのか」
「ないです」
「じゃあなんだ、これ」
「いや、それは、ちょっとたまたま」
「予定もないのに?婚姻届けを?たまたま?」

 相澤はただの友人だからやましいことはないはずなのに、いや、やましいことはあるといえばあるが、それとは別種の不倫や浮気の証拠を押さえられたような気まずさのせいで頭と舌が回らなくなる。
 ちょっとした出来心だったんだ。相澤は俺といるときが一番幸せそうだし、それならこの紙に俺とお前の名前書くのはどうかなって思っただけなんだ。
 ほんとそれだけの思いつきの産物なんだから、そんな悲愴って感じの顔で笑うのやめてくれ。