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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -

 ベッドサイドに飾っていたフォトフレームが床に叩きつけられてパリンとわかりやすく『割れましたよ』という音をたてた。買ってきたばかりの食材を冷蔵庫にしまっている最中だったので犯行現場は確認できなかったが、割れたフォトフレームのすぐそばで呆然と立ちつくしているグズマの様子からするにどうやら服だか腕だかにひっかけてうっかり落としてしまったらしい。

「あーあ。壊されちゃった」

 飾ってあったのは付き合う前に無理やり肩を組んで撮影したおれとグズマのツーショットだ。おれにとっては思い出の一枚なのだがグズマは写真を飾られるのを恥ずかしがって常々ブッ壊すだのなんだのと言っていた。
 少しでも埃が積もってたら大切にされてないのかとそわそわして、汚れがついてたら自分でこっそり磨いてたくせに。
 わざとじゃないにしろ宣言通りブッ壊されてしまったことには違いないのでちょっとからかってやろうと「写真そんなに嫌だった?かなしいなぁ」と芝居がかった調子で声をかける。と、グズマはなぜかおれのほうを見ることなくぎこちない動きでガラスの破片に手を伸ばした。いや危ないわ。割れたガラスの切れ味を知らないのか。

「おれが捨てるから、グズマはむこう行ってな」

 足早に近づいてガラスに触れさせないよう腕を掴む。しかし怪我をしないようにと指示した瞬間、引き留めていたおれの手を勢いよく振り払ったグズマは今度こそ止める間もなくガラス片が刺さるのもお構いなしにひび割れたフォトフレームから写真を抜き取り、手にしたそれを奪われまいとするようにこちらを警戒しながらじりじりと後ずさりをはじめた。
 ぎゅっと唇を引き結んで真っ青な顔に真剣な表情浮かべてるところ悪いけどそれを捨てるつもりはさらさらないから空いてるほうの手でゴルフクラブ探すのはマジでやめてこわいこわい。