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 別に向こうも同じ気持ちだと思って告白したわけじゃないし振られるくらいなら同情でも好奇心でもなんでもいいからお付き合いしてほしい。お試しでいい。とりあえず恋人になりたい。
 そう思ってはいるが、それでも本気で好きになった相手から「断るのはなんとなくもったいない気がするけどそういう意味で好きになれるかわからないし付き合うにしても男とどうこうする自分がまったく想像できない」というあまりに素直な答えを返されてしまうともう少し言葉を繕えよと文句を言いたくなってしまう。いや、空気が読めるというか読んでしまうタイプの瀬呂に誤魔化しなしの本心を教えてもらえるというのは心を許されてる感じがしてそれはそれで嬉しいんだけれども。

「瀬呂って誠実なのか不誠実なのかわかんないよなぁ」
「お前以外からの告白だったらちゃんと言葉選んで断ってたっての」
「はーーーなるほどねお前俺のこと好きだろ」
「友達以上恋人未満でな」
「伸びしろがある」
「そういうポジティブなとこ好きだぜ」

 軽口を交わしながら瀬呂のテープを拝借し、適当な幅にカットしたそれを瀬呂の口にぺたりと貼り付ける。罰ゲームのような有様だが告白にオーケーを貰えていない現状しかたない。いまからするのは想像力が欠如している瀬呂くんからいい返事をもぎとるためのデモンストレーションだ。

「目ェつぶんなよ」

 本当なら閉じとけと言いたいところだが相手が俺だということを意識してもらえないと意味がないので醤油顔のわりに眼力の強い瀬呂の視線に耐えつつそっと瞼を閉じ顔を近づける。
 テープ越しに一瞬触れるだけのキス。それだけのことに雄英受験のときと同じくらい緊張して、それだけのことが合格を知ったときくらい嬉しくて、この気持ちの一割でもいいから瀬呂が同じように感じてくれればいいなと思いながら頬に添えた手を離す。そうして半端な長さの黒髪が指にかかってさらりと動いた瞬間、瀬呂の体がびくりと跳ねた。

「わ」

 突然俺の両肩を掴むと引き剥がすようにして距離を取ってきた瀬呂にまさかそんなに嫌だったのかと内心で泡を食う。が、しかし嫌がっているにしては様子が変だった。
 指示した通りずっと開いたまま俺を見ていたのであろう目は逃げるように何もない空間を泳ぎ、眉は怒っているのか困っているのかわからない角度に寄せられている。
 そしてなにより先ほどまで触れていた頬が、いまは触れば火傷してしまいそうなほど赤い。

「……俺とどうこうするイメージできた?」

 正直気持ち悪がられるかなんとも思われない可能性も考えていただけにこの反応は上々だ。
 友達に見せるのとは明らかに質の違う表情に賭けに勝ったことを確信し意地の悪い問いかけをすると、テープで口を塞がれたままの瀬呂が恨めしげに睨みつけてきた。
 付き合う理由は「断るのはなんとなくもったいない」程度でかまわないから、いつか名実ともに恋人として好きになってくれよな。