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「#幼馴染」のBL小説を読む
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『プライベートだからってサイン断られてもしかして彼女とデート!?って思ったら友達と買い物してただけみたい よかった〜!』

 SNSにアップされた恋人の隠し撮り写真と脳みそお花畑なコメントに憤りと呆れ、そしてそれを上回る安堵が押し寄せてきて俺は大きく息を吐いた。
 近頃のダンデはどうも様子がおかしい。イメージ戦略のために俺という恋人の存在を隠していたはずなのにタワーオーナーになった途端匂わせるような言動が増えたというかファンへの対応がやけに強気になったというか。
 とりあえず今回のダンデの意味深な対応はただの気のせい、勘違いということで済みそうだがこのままではいずれごまかしが効かなくなる。別にダンデとの関係を公表するのが嫌というわけではないけれど、いまのガラルはムゲンダイナの一件やローズ委員長の逮捕、チャンピオン交代で揺れに揺れている。バトルタワーだって始まったばかりだというのにわざわざ火種を増やすのが得策だとは思えなかった。

「どうした?むずかしい顔をして」

 俺の考えを知ってか知らずか、ソファに座った俺の肩にのしかかるようにスマホを覗き込んできたダンデが「ああ」と頼んでいた商品が手元に届いたときのような声をあげて自分のスマホを取り出した。
 無言で押し付けられたココアに口をつけ、流れるように画面をフリックしているダンデの指をぼんやり眺める。と、「よし」という満足げな声と共に例の隠し撮りの写真にダンデの公式アカウントからコメントがついた。

『恋人か友人か、決めるのはオレであってあなたじゃない』

「━━━━はあああああああああ!!??」
「これでマスコミが大量に釣れるぞ!聞きたいことがあるならタワーでオレに勝てと言えばいい宣伝になるだろう」

 にっこり笑うダンデいわくライバルであるキバナの炎上商法を真似たらしいが、キバナのお家芸のあれは商法というより自然発火だ。だいたい炎上商法はどうやったってブランドに、イメージに傷がつく。ダンデという存在に傷がつく。軽々しく使っていい手ではない。

「おいダンデ」
「相談しなかったことは謝るが小言なら聞かないからな。お前との関係を隠すのも他人にあれこれ言われるのもフリーだと思われて言い寄られるのもお前が言い寄られてるのを黙って見てるしかないのももうたくさんだ!」

 オレはもうチャンピオンじゃないしローズさんもいないんだからイメージなんて気にせず好きにやってやると晴れ晴れとした顔で言い切るダンデにしばし瞠目し、また大きく深く息を吐く。
 チャンピオンとして、恋人として、想像していた以上にいろいろなことを我慢していたのだろうと思うとなにも言えない。
 とりあえずすぐに防刃ベストを用意しよう。あと自宅の警備を強化しよう。
 ダンデの狙い通りとんでもないお祭り騒ぎになっているSNSを見て俺はそう決意した。