ぽっかりと空いたスケジュールに上手く重なった友人からの遊びの誘い。最近忙しかったし、それ以前もなにかと理由をつけて断ってばかりだったしと自分に言い訳できる要素に流され頷いてしまったのが悪かったのか、待ち合わせから一時間もたたず目の前で繰り広げられはじめた修羅場に水上はげんなりとため息を吐いた。 「お邪魔やろうし、帰るわ」 水上の存在を気にもとめずに浮気野郎だなんだと恨言を吐き続ける女にうんざりしつつ、そういう話しなら自分はいないほうがいいだろうと踵を返す。 惚れた腫れたなんて厄介ごと、ただでさえ手に余っているというのにそのうえ他人の分まで世話を焼く気になど到底なれなかった。 「嫌ややめて一人にせんといて!」 「一人ちゃうやろ。彼女さんと二人や」 「こういう場合二人っきりっていうのは一対一と同義やねん!あと彼女ちゃうから!もう別れとるから!」 「へーそうなん」 そっけなく返して縋りつかれた腕を振り解こうとするのだが、無駄に力が強い。トリオン体ならベイルアウトできるのに生身は不便だ。思わず舌打ちが漏れる。 ━━別れたいうても向こうは納得しとらんのやろ。そんで俺には関係ない話やろ。さっきからわめいとる浮気やなんやの事情も知らんし第三者巻き込まんと当事者だけで解決せぇや。 「ちょっとあんたなに逃げようとしてんの!あんたが水上やろ!?知ってんねんでこの泥棒猫!」 「…………あ?」 この修羅場において自身を無関係な第三者だと断じるのがどれだけみじめなことかこの男には一生わからないだろうなと自虐的に考えながら口を開こうとしたその瞬間、突然飛んできた流れ弾に水上はぽかんと目口を開いた。 怒り心頭といったふうに睨まれる理由に心当たりがあるはずもなくなく説明を求めて友人に視線をやるとなにやら申し訳なさそうな、泣き出しそうな顔で拝むように手を合わせている。 「水上忙しいから、俺がフリーな時間多くしとかんかったら遊ばれへんやん。彼女できてから全然予定合わんようになって、こらあかんなって思って……」 それで別れてんけど何回理由話してもわかってくれへんねんお前からも言うたってとぺこぺこ頭を下げる情けない姿に止まっていた脳がじわじわ再起動しはじめた水上はなんとも微妙な気持ちで眉根を寄せた。 泥棒猫て、ナマで聞く機会一生あると思わんかったんやけど。なんや。俺無関係とちゃうんかい。 |