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物心ついたときから隣にはジョウゴがいて、それがずっと続くんだと思っていた。
そんな当然が崩れたのはジョウゴがジムチャレンジを諦めて街へ戻ると言ったとき。
チャンピオンになって帰ってくるのを待っているというから頑張ったがチャレンジ中キバナはずっと現実を信じられなかった。
晴天の青空が実は赤いんだと言われたような気分で、それでも約束したのだからと真剣に挑んで勝ち進んだ。
バトルは楽しい。
強い相手に策を練り、ポケモンたちと共にギリギリの戦いを繰り広げるときの血の沸くような高揚感は得難いものだ。
けれどバトルが終わったあと傍にジョウゴがいないのにはいつまで経っても慣れることがなく、ジョウゴを置いて先へ進んだのは自分ほうのはずなのに置いていかれたという焦燥感が常にあった。
そのときはまだそんなふうに感じる理由はわかっていなかったが、チャンピオン戦で敗北して街に戻った後妙な距離が出来てしまったように感じるジョウゴをとにかく繋ぎ止めなければならないと、意識して親友と呼ぶようになった。
はじめてそう口にしたとき少し驚いたように目を瞬かせて嬉しそうにはにかんだジョウゴの顔をいまでもよく覚えている。
そのときに感じた胸の痛みの意味を理解したのはずっと後のことだ。
どうせなら一生気づかないままでいられたらきっと幸せだったろうに。

自分に言い聞かせるように、ジョウゴに縋りつくように親友という言葉を使い始めてしばらくたったとき、家で考えればいいのに一緒にいたくてわざわざジョウゴの隣でポケモンバトルの戦術を考えていたら集中しろと言われてしまい、鬱陶しがられたわけではなく純粋に親友として激励してくれただけなのだとわかっていたが突き放されたようで足がすくんだ。
応援しているからと言われてしまえば下手に食い下がることもできず、会う時間を減らせば繋ぎ止めたはずの距離は簡単に開いていった。
顔を見ることができないのは恐ろしい。
表情が読めないとどんどん悪いほうに想像してしまう。
返信が遅い。
会話が続かない。
内容なんてあってないようなくだらないメッセージを送ってもいいのか。
電話をかけても迷惑にならないタイミングは。
誘えば必ず来てくれていた年に一度のチャンピオン戦も仕事の都合がつかないからと断られてしまった。
忙しいだけだと思いたい。
今は少し余裕がないだけで、落ち着けばまた昔みたいに二人で楽しく過ごすことができるのだと。



飲みに誘ってくれなくても、普段話題に出してくれていなくてもよかった。
せめて親友だと言ってほしかった。
親友はキバナだけだと男の言葉を否定してほしかった。
取り乱したところを見せて引かれたくなくて必死に作った笑顔に気づいているのかいないのか、いとも簡単に別れの言葉を口にしたジョウゴは『親友』を抱えて去っていった。
張り付けた笑みが崩れて涙と嗚咽が零れても、隣から慰めの声は聞こえてこなかった。