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ホーキンスは自分の占いに絶対の自信を持っているからその結果に反することはしようとしない。
そのスタンスは日常はおろか戦闘の最中であっても決して崩れることはないのだが、かといってやりたいことや好きなものがその日の占いで悪いものと判明したとしてなんの不満もなく諦められるような素直な性格なら海賊などしていないという話で、占いにより自身の欲求が阻まれるたびに無表情のままイライラしはじめるホーキンスのためおれは可能な限りその欲求を叶えることにしていた。
例えば運気向上の食品がホーキンスの嫌いな肉だったときのためコックとともに味も食感も魚に近い肉の加工品を開発しておいたり、ホーキンスが愛用していたティーカップが割れてしまい次の島で新しいものを買おうとしていたのに買い物をすると運気が下がると出たときにはアンティークショップの店主と交渉していくつかの頼みごとを聞いてやる代わりに譲ってもらったり。
ちなみにティーカップのときは仲間たちから「海賊なら奪えよ」と呆れられたが奪う過程で割れたりヒビが入ってしまっては意味がないため最善策をとったまでであり普段はもっと真っ当に海賊しているのであしからず。
さて、ホーキンスの占いによると今日は『風呂に入るとよくないことが起きる日』らしく、それはつまり髪も体もおれが代わりに洗ってやる日でもある。
洗うといってもあくまで泡と濡れタオルを駆使して汚れを落とすだけで湯に浸かることはできないため、身体が冷えないよう先に洗髪台で長い髪を洗ってから風呂場へ行くのがお決まりの流れだ。
鼻歌を歌いながら洗髪台の桶に湯を張りシャンプーやトリートメントを用意していると椅子に座って大人しく待っていたホーキンスが睨むような目つきでこちらを見上げていた。

「どうした、ホーキンス」
「……前から気になっていたんだが、お前はなにが楽しくておれの世話をしたがるんだ」
「なにがって?そりゃあ全部さ。惚れた相手の力になれるんだから、楽しいに決まってる」

役得なことも多いしなと笑って桶に張った湯にホーキンスの髪を広げるとほんのり赤くなった耳が目に入った。
じわじわと首や頬にまで広がる赤の原因がぬるめの湯でないのは間違いないだろう。
元来の性格のせいか生まれ育った環境ゆえかわがままを言うのも世話をされるのも当然のように思っている節があるホーキンスだが恋愛由来の甘さに関してはまた別の話らしくどうしても慣れることができないらしい。
白い肌を赤く染め不機嫌にも見える顔でむずむずと唇を動かして、こんな反応をしてもらえるなら尽くし甲斐もあるというものだ。
それにこうしておれの手でホーキンスの身を清めた夜には必ず、まさに役得と言うべき素晴らしい続きがある。
そして恋人になる前は年に一度もなかったはずの『風呂に入るとよくないことが起きる日』が週に一度は占いに現れるようになったのは、口に出して指摘するつもりはないがまあ、そういうことなのだろう。
わかりづらくもわかりやすい夜の誘いに気づけば恋人をかわいらしく思い、甘やかしたいという気持ちに拍車がかかるのは当たり前のことだった。

「こんな魅力的な恋人に尽くせるなんて、おれは本当に幸せ者だ」
「……趣味が悪い」
「まさか。最高の間違いだろ?」

広い額にキスを落とすとふんと鼻を鳴らし興味が失せたとばかりに視線を逸らされたがもはや白いところがないほど赤に染まった顔でそんな反応をされても可愛いだけだ。
ホーキンスに占ってもらわなくてもこれだけは確信をもって言い切れる。
おれの恋愛運は今日も変わらず100パーセントに違いない。