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おれは自他ともに認めるお節介な男だ。
自分の経験が役に立てばとつい口を出してしまうし、困っている人を見つけたら手を貸したくなる。
相手が助けを必要としておらずとも何か手伝えることはないかと声をかけてしまう少々行き過ぎたそれは三割程度の人には受け入れてもらえるが残り七割には徹底的に疎まれる気質だった。
鬱陶しく思われるだろうなというのはわかっているのにどうしても改善できないものだから、どうせすべての人に好かれることはできない、七割との良好な関係は諦めてそのぶん三割の自分を好いてくれる人を大切にしようと、そう心に決めたのはもうずいぶんと前のこと。
自分を好いてくれる人だけを好いて、嫌う人からは可能な限り距離を取るようにして、ずっとそんなふうに生きてきたから同期であるスモーカーのことを好きになったときには生まれて初めて心の底から神に祈った。
頼むから三割の側の人間であってくれ。
都合のいい道具だと思ってくれてかまわないから、どうかおれを疎んでくれるなと。
もちろんいるかどうかもわからない神に祈るだけではなくどうにかして自制心を身につけようと無駄だと放りだしていた世話焼き癖を直す努力も再開した。
結局のところ日に日に強くなる恋心に負けて対スモーカーのお節介は余計にひどくなってしてしまったが、それでも自分なりに頑張ってはいたのだ。
とはいえ努力が実を結ぶとは限らないというのはこれまでの経験でよく理解していた。
どれだけ上辺を取り繕ったところで合わない人間は合わない。
わかっていたから、あまり関係の良くない後輩に戦闘中のアドバイスをしている最中に「おい」と冷たい声をかけられた瞬間、心臓が縮む思いがした。

「いい加減にしとけ。鬱陶しがられてんのがわからねェのか」

苛立ちと呆れと嫌悪が入り混じった声色は七割の人間がおれを突き放すときのものと同じで、それをうけた直後へらりといつも通り笑えたのは奇跡だったと思う。
親しい友人から悪癖だと指摘される諦め癖もこういうときには役に立つらしい。

「ごめんね、でも一応命にかかわることだからさ」
「そういうのは自分で気づかねェと意味がねェんだよ。前々から思ってたが、お前は手も口も出し過ぎだ」

そうだよねほんとごめんねとへらへら笑いながら謝罪を口にするおれにスモーカーは不愉快そうに顔を歪めて葉巻をくわえたまま器用に舌打ちした。
これまでも人の世話を焼いているときに小言を貰うことが多々あったからなんとなくわかってはいたのだ。
それでも受け入れたくなくて必死に目を逸らそうとしていた現実が確信に変わる。
スモーカーはおれの行き過ぎたお節介を不愉快に感じる、七割側の人間だ。

「余計な世話だってわかってるから手出ししないように努力はしてるんだけど、近くにいるとどうしてもだめでさ」
「……なら離れりゃいいだろうが」
「同じ隊の人間だし、あいつと離れるのは難しいだろうなァ」

引き止めて悪かったと手を振った途端ようやく解放されたという態度を隠しもせず去っていった後輩を思い出して苦笑する。
離れられるものなら離れているが仕事上常に顔を付き合わせなければならない相手だ。
どちらかが辞めるか異動になるかあるいは死ぬまであの後輩との接点が切れることはないだろう。
対してスモーカーは友人ともいえないただの同期で、所属している隊も違うし昇進だって向こうのほうが圧倒的にはやい。
つまり離れようと思えば簡単に離れられる関係だ。

「……おれ、鬱陶しいかなァ」
「鬱陶しいな」
「……うん。そっか」

未練がましく尋ねた言葉をきっぱりと一刀両断にされて、そういうまっすぐなところも好きだったんだよなァと目を細める。
「できれば態度に出さないでね」と独り言のように一方的なお願いするとスモーカーは怪訝そうに眉を顰めた。
お節介はやめられないが鬱陶しがられたくはないから、自分を嫌う七割の人からは可能な限り距離を取る。
それはいつものことだけれど、スモーカーにさっきの後輩みたいな態度をとられたら、きっとおれは死んでしまいたくなるだろうから。