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はいどーぞと差し出したのは別にニーハイとか網タイツとかのマニアックなものではなくその辺で売っている普通の靴下。
ネタに走らないでちゃんと堅実にチョイスしたにも関わらず、それを見た瞬間若は思いきり顔を顰め侮蔑の表情を作った。
前回のことが尾を引いているのか心の中で『この変態野郎』と罵っているのが丸わかりだ。
傷つきはしないが純粋に酷いなぁとは思う。
俺の趣味全開とはいえ一応プレゼントなのに。
恋人に対する不満はなるべく溜め込まない主義なのでさくっと思ったままを伝えると若がとても複雑そうに「初めてのプレゼントが靴下ってどうなんだ」と呟いた。
もしかして最初は薔薇の花束とかそういうのを御所望だったのだろうか。
若ってば変なとこでロマンチストだからなぁ。

「でも初めてのプレゼントは俺自身だからこれは二番目ですよ?」

今からじゃどーやったって花束を初めてのプレゼントにするのは無理だから諦めてくださいとお願いすると若はぎゅっと口を一文字に結んでそっぽを向いてしまった。
最近気づいたのだが、まるで怒っているようにしか見えないこの態度は若なりの照れ隠しのようだ。
本当に機嫌を損ねたときの若は同じ顔をしていても絶対に俺から目を逸らさない。
そんな細かい差に気づくとか愛だよね。
俺ほんとに足だけじゃなくて若のことが丸々好きなんだなー、なんて、改めて実感すると小っ恥ずかしい限りだ。

「……急に黙るな」
「黙ったのは若のほうじゃないですかー」
「うるせェ」

黙るなと言ったりうるさいと言ったりの間もムスッとした顔は変わらない。
なんだか最近の若は以前と比べて格段に笑顔率が減った。
というか、表情のレパートリーが増えた。
こういう関係になる前は足に目を奪われ過ぎてじっくり顔を見ることなかったんだけど少なくとも記憶の中の若はいつだって笑顔で、それが今じゃ俺が何かするたびに拗ねたり照れたり怒ったりと非常に忙しい。
笑顔が減ったっていうのがいいことか悪いことかはわからないが個人的には表情がコロコロ変わる若の方がかわいらしいなぁと思うので指摘はしないことにしている。
言ったら意地はって無理やり笑顔固定しそうだからね、若。
今のこの嫌そうな顔も悪くないけど一番はやっぱり足弄られてるときのエロい顔なんだよなーなんてことをつらつら考えながら「せっかくだし俺がはかせてあげましょーか」といやらしく囁くと無言で靴下を奪い取られた。
度々こうして自主的に行動してくれるのは、どうやら俺にやりたい放題にされているわけじゃなく若の寛大な心の上でこの行為が許されているんだということを知らしめるため、らしい。
毒をもって毒を制す的な考え方だけど、どっちかっていうと飛んで火にいる夏の虫である。
俺の視線気にしながら嫌々自分で靴下はく若とか、すっごい眼福。

「おー……!」
「なに靴下はくだけで興奮してんだ気色悪ィ」

それだけの行為を散々渋った若が言わないでくださいって感じだけど今はこの光景を目に焼き付けるのが最優先事項だ。
はき慣れてないみたいだから椅子かベッドに腰掛けてはくんだろうと思ってたらまさかの片足立ち派だった若。
そこまではまだ俺も冷静でいられた。
ドフラミンゴのフラミンゴ立ちとか考えた瞬間吹き出しそうになったけど耐えきった以上問題はない。
しかし若が妙に色っぽい雰囲気でじっくりゆっくり時間をかけてはいてくれるもんだからもうダメだ。
俺大興奮。
表情からして俺を楽しませるためにやってるわけじゃないんだろうけど、これはいい。
素晴らしい。
本職の人が脱ぐより若が靴下はくほうが下半身にくるとか若すげぇ。
朱の差した頬、戸惑うように顰められた眉、生地が擦れるたびに軋む全身の筋肉と唇の端から零れる吐息……って、え?あれ?これって……嘘、マジで?

「…………えーと、若」

ようやく片方の靴下をはき終えた若に声をかけるも返ってくるのは沈黙ばかり。
うん、まあ、そりゃそーだ。
そうそう認められることじゃないよなぁ、これは。
でも若もともと敏感だったし俺もヤるたびに弄りたおしてたからしかたないというか当然の結果というか、ね?

「あー……その、脱がせるのは俺に任せてください!」

靴下はくだけで興奮して気持ちよくなっちゃったらしい若にサムズアップしたら結構な勢いではけなかった方の靴下を投げつけられた。
けれど否定はされなかったので何度もキスしながらベッドに押し倒す。
開発した責任はちゃんととるから安心してね、若!