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- ナノ -

恋をして、告白して、受け入れられた。
つまりこれって恋人同士ってことだよな?
恋人同士なら程度の差はあれ、いちゃいちゃしたりベタベタしたりするのが普通だよな?
なんか、なんもないんだけど。
ゾロは毎日寝てるか筋トレしてるかだし、おれはおれでゾロの寝顔を眺めたり筋トレしてるそばでぼーっと釣りしたりと平和な船旅を謳歌している。
おかしくね?おれらまだ若いんだぜ?
もっとこう、あるだろ色々と。
別に体目当てってわけじゃないけど、告白成功した日の夜なんかそりゃもう頭の中ピンクだったよおれは。
それがなんだこの現実。
少々げんなりした心持ちでゾロの素振りの回数を数えながら小さく溜息をつく。
すると突然ピタリとゾロの動きが止まった。

「ゾロ?まだ半分すぎたとこだぞ」

いつも決まった回数をきっちりこなすまで絶対に休憩しないのにどうしたんだ。
もしかして今日は日差しが強いから、日射病とか熱射病とかそういうアレか。
詳しくは知らないけど確か放置してると死ぬこともあるってチョッパーが言ってた……気がする。
うわどうしよう中途半端に思い出したせいで急激に心配になってきた。
他の奴にも言えることだけどゾロは特に自分の体を顧みないで無茶するから放っておいたらマジで死にかねない。

「おいゾロ無理すんなよ。気分悪いか?日陰で休むか?いま飲み物持って……ゾロ?」

鈍い音とともに素振り用の器具が投げ捨てられ、慌てるおれの腕をゾロの硬い手が掴む。
汗で湿った掌は熱いような冷たいような不思議な感覚がした。

「……またコックのところに行く気か」
「え、そりゃまァ、ーーいッ!?」

水にしろドリンクにしろキッチンに行かなきゃ貰えないから必然的にサンジは会うだろうけどまたってなんだ、食いしん坊ルフィじゃあるまいしそんな頻繁に通ってる憶えはないぞ。
そう困惑して眉を寄せるおれの腕をゾロが万力のような力で締め上げだした。

「ちょ、ゾロ、なに……痛ッてェんだけど」

反射的に伺ったゾロの表情があまりに必死で今にも泣きだしそうに見えたためギチギチと軋む骨に顔を歪めながらも振り払らわずじっと耐えるがこれはヤバい。
暫く利き手使い物にならないんじゃと懸念しているとゾロの唇が「ふざけんな」と形を作った。

「てめェはおれの、恋人だろうが」
「おう」

なにもそれらしいことしてなくたって、おれが好きだと言ってお前が頷いた瞬間からおれはお前の恋人だ。
そう思いを込めて即答すると強張っていたゾロの表情がほんの少しだけ和らぐ。

「……なら、なんでおれから離れようとすんだよ」

いっつもあのクソコックばっかり構いやがって、と吐き捨てるゾロに一瞬で腕の痛みが引いた。
なにそれ嫉妬?嫉妬してんの?
ゾロが、サンジに、おれのせいで?
予想外の爆弾発言にぶわっとテンションが振り切れて腕をつかまれたままゾロを抱き寄せる。
筋トレしてたおかげで汗臭いし筋肉でごつごつしてるのにそれが興奮材料になるのだから恋ってすごい。

「なんでおれがサンジに構ってるって思うんだ?」
「おれの近くで釣りしてても魚がかかったらすぐあいつのとこに行くじゃねェか」
「食用かどうか聞きにいってるだけだ」
「……昼寝して、目ェ覚ましたら絶対キッチンにいる」
「晩飯の時間になっても起きないからゾロのぶんのメシがルフィに喰われないよう見張ってんだよ」
「そんなもんどうでもいいからそばにいろ」

わあ、かわいい。
拗ねた態度でそう言われてしまったらハイと答えざるをえないな。
恋人のために他を犠牲にするのも男の甲斐性だ。
にやにやしながら引き締まった体を堪能しているとようやく平静を取り戻したらしいゾロが「いつまで抱き付いてんだ暑苦しい」と掴んでいた腕ごとおれを押しのけた。
そのまま素振りに戻ろうとしているらしいがそうはさせない。

「ゾロ」

今度は後ろから抱き付いてうっすらと色づいた首筋をべろりと舐める。
うん、しょっぱい。

「て、めェ、なにしやがる!」
「なにって恋人とのスキンシップ?」

舐められた部分を手で押さえながら怒鳴るゾロの耳や頬に追撃とばかりに唇を落とす。
軽いキスのたびに普段ではあり得ないような上ずった声がゾロの口から漏れるのが楽しくてシャツの中に手を突っ込むと殺気とともに肘鉄が飛んできた。
咄嗟に回避したため服を掠っただけだったが、その速度や正確さからして割と本気の一撃だったのだろう。
さすがに真昼間の甲板で盛るほど非常識ではないがちょっと残念だ。

「アルバ!」
「はいはいごめんごめん悪かった、そんな怒るなって」

ハンズアップしてこれ以上イタズラする気がないことを示すと舌打ちしながらトレーニングを再開したゾロにやれやれと肩をすくめる。
たぶんゾロがあんなにおれが傍を離れることに対し拒否感を示したのは『ずっとそばにいること』がゾロのなかの恋人のカタチだからで、逆をいえば傍にいることで満足してしまうから恋人らしい接触が何一つないんだと思う。
だからスキンシップを増やしてその状態に慣れさせて傍にいるだけじゃ満足できないようにすれば諸々解決すると踏んだんだけど、なかなか根気のいる作業になりそうだ。
ああ、でも。

「ゾロ」
「……なんだ」
「好きだよ」

それだけの言葉で肌を真っ赤に染めるゾロに、それもまた一興かと笑みを深めた。