「ヴェルゴの尻ってかったいよなァ……マジで力抜いててこれなの?硬すぎじゃね?」 「お前だって同じようなものだろう」 「うーん、そうか……うーん」 そうだよなァ、男だもんなァ。 まじまじとケツを揉みながらそう呟くとベッドでうつ伏せになって本を読んでいたヴェルゴが無言で武装色の覇気を纏った。 ズボンを引っ張って中をのぞくと案の定真っ黒くろだ。 少しくらい指を食い込ませてみせようと頑張っていたのにこんなんじゃ試す気力すら失せるじゃないか。 抗議の意を込めてぺちぺちと尻っぺたを叩くがヴェルゴはこちらに一瞥もくれず黙々と文字を追い続けている。 じゃれあいを求める恋人に対してなんたる仕打ち。 「なあヴェルゴ、ヴェルゴってば」 「……なんだ」 「なんだじゃない、覇気といてくれよ」 「といたところで枕には向かないとわかったはずだ」 相変わらず本に視線を落としたままのヴェルゴの言葉におれはきょとりと目を瞬かせた。 おれ普通にそこにあるからって理由でケツ揉んでただけなんだけど……枕? 「…………あァ!」 ぽん、と手のかわりにヴェルゴの尻を打つ。 ヴェルゴがわずかに身じろいだ隙をつき比喩表現抜きで鋼の強度な尻にごろりと頭をのっけた。 「アルバ」と少し慌てたように名前を呼ばれたが気にせず頬を擦り寄せて寝心地を確認する。 うん、沈みこまないしフィットしないし高さ的に首が痛いし枕としてはいただけない要素満載だ。 「おいアルバ、やめろ」 「お前さァ、おれが前に話したこと気にしてたの?」 そう言ってニヤけるとこちらを振り向いていたヴェルゴがサングラスで瞳を隠してなおわかりやすく動揺した。 付き合う前、まだヴェルゴがおれに惚れているなんて思いもしなかったころ酒の肴にしていた昔の女の話。 女の子のお尻って弾力があってふわふわしててさァ、枕にしたらめちゃくちゃ気持ちいいんだよ、なんて。 そんな話を聞いたときヴェルゴは決まってかすかに頬を持ち上げ「そうか」と相槌を打つだけだったけど、ずっと憶えてるってことは相当ショックだったんだろう。 「おれが『男だもんな』って言ったからいじけたんだろ?心配しなくてもおれヴェルゴの尻大好きだよ!小尻だけど肉付きよくて引き締まってるから具合もいいーーーったたたたごめ、痛いギブギブギブ!!」 不埒なこと言おうとした瞬間とても滑らかな動きで胴体をカニばさみにされて体が上下に千切れそうになった。 とっさに覇気で防御するけど実力差がありすぎて大した抵抗にはならない。 タップしても許してくれないので諦めて遠のく意識のまま目を閉じる。 正直あまり硬さの変化は感じられないが尻まわりの覇気をといてくれたのはヴェルゴの優しさなんだろう、たぶん。 |