*『鈍感、虎穴に入る』にてベポから「嫌いって言われてもどこが嫌いなのかまでちゃんと聞くんだよ」とアドバイスを受けていなかったらというif。 バッドエンドなので本編とは切り離してお楽しみください。 「…………きらい、だ」 子供じみているぶん素直でわかりやすい拒絶の言葉は鈍感なおれにも誤解の隙を与えず真っ直ぐに届いた。 まあ、そうだよな。 船長もおれのこと好いてくれてるかもなんて普通に考えてあり得ない。 なに馬鹿なこと期待してたんだ、おれ。 何かが崩れる音とともに頭の芯がスッと冷えて、急激に視界がクリアになる。 右腕を奪ったのも、返すまいと抱きしめる動作も結局は船を降りるおれへのちょっとした嫌がらせにすぎないのだろう。 涙だってきっとおれさえどこかへ消えれば止まるはずだ。 おれが拭うまでもない。 船長、と声をかけようとして唇を噤んだ。 向けられた背中を一瞥して船長室をあとにする。 なにも考えられず廊下を歩いていると、ふと失ったままの右腕が目に入った。 ・このまま船を去ろう |