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若至上主義なところとかなんなら若以外マジでどうでもいいと思ってんだろうなってところとか全部わかっていて付き合ったんだし今更そこに文句をつける気はないけれどだからといって一切不満を感じないというわけでもない。
小さなことにむっとして嫉妬でチリチリと胸が焼けるのを冷静に受け止め、おれは理不尽に怒りを爆発させてしまう前にガス抜きを決行することにした。

「ちょっとしばらく拗ねるけど気にしないでくれ」
「……はあ?」

なに言ってんだこいつというようにゴーグルの下で目を眇めたグラディウスに「少し一人の時間を増やすだけだから」と告げると、まあどうでもいいと思ったのだろう、すぐ興味を失った様子で「勝手にしろ」と会話を切られた。
恋人にあるまじき無関心さだがこれがグラディウスだしおれも好きなときにかまって好きなときに離れているのだからお互い様といえばお互い様である。
そうして先に宣言しておいたので誤解される心配もないと心のままに拗ねて――具体的にはどうせデートに誘ったって若の一言のほうが優先されるんだからと一人で街をぶらついたり翌日突然任務を言い渡される可能性があるという理由でセックスを断られるくらいならと最初からそういう雰囲気にならないようにしたり、グラディウスにとってはむしろ面倒が減って快適であろう拗ね方をして二週間。
ソファに座るおれの前で仁王立ちになったグラディウスが妙にイライラした声で「おい」と話しかけてきた。

「……しばらくってのはいつまでだ」
「ん?え、なに?」
「とぼけるんじゃねェ……!ちょっとだのしばらくだの少しだの曖昧な言葉を使いやがって」

大体拗ねるってなんだガキじゃあるまいしとそこまで言われてようやくグラディウスの言いたいことが理解できておれは純粋に驚いた。
若に影響がないことでも一応気にはなるのかと。
しかしすぐにグラディウスの苛立ちの原因が『曖昧な表現をして明確な期間を定めなかったこと』に対してだと気づき、そりゃそうだよな、グラディウスらしいなと苦笑して

「じゃああと一ヶ月で」

と指を一本たてて示した瞬間ブチギレられた。
どうやらグラディウスにとってのしばらくとおれの中のしばらくにはかなりの差があったようだ。
感覚的な言葉の共有って難しい。