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「#幼馴染」のBL小説を読む
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一人でいたら可哀想だとかもっと仲間とのコミュニケーションをとかそんな考えはおれの中には一切なかった。
黙々とメシをかきこむサカズキは周囲の目なんて気にしちゃいなかったし、なんならコミュニケーションをとろうとすればするほど逆に和を乱すようなやつだったから放っておくのが一番だとすら思っていた。
同じ隊にいるのなんて一瞬のこと。
どうせすぐ昇格して上官になるのだからわざわざ関わりを持つ必要はない。
そう思っていたのに一緒に昼食をとるはめになってしまったのはうちの隊長が『せっかく同じ隊になったんだからみんなでなかよくがんばりましょう』という脳みそお花畑な人間だったからだ。
突然サカズキと二人で呼び出されて笑顔で「今日から一緒にご飯を食べるように」と言われたとき隣から感じた殺気と熱気は今でも忘れない。
内心ではありとあらゆる罵詈雑言を吐き捨てたがそれでもおれはとてもまじめで優秀な海兵さんだったので初日から命令を無視しようとしたサカズキの隣を陣取って無言でメシを食った。
サカズキが両隣埋まっている席に座ったら事情を説明して穏便に、聞き分けてもらえなかった場合は実力行使で隣の席を譲ってもらったしマグマで脅されても屈しなかった。
巻かれそうになっても捜しあて、海賊に重傷を負わされ医者に止められても這いずっていき、白兵戦の真っ最中の海賊船をサカズキに沈められても泳いで海を渡りずぶ濡れのままメシを食った。
ここまでは完全にただの意地だったが、海賊船ごとおれを海の藻屑にしようとしたサカズキ当人が昼飯時に現れたおれの姿に一瞬ほっとしたのを見てから少しだけ情が湧いた。
殺されかけておいて頭がおかしいと思うが、それをいうなら殺しかけておいてそんな反応をしたサカズキだっておかしいので気にしたら負けだ。
とにかくそれからもおれとサカズキはほぼ毎日一緒にメシを食った。
以前と違ってぽつぽつ話をすることもあったしこれまで通り無言でメシをかきこむ日もあった。
見ものだったのはやはり偉くなって自分の隊を持つというサカズキに電伝虫の番号を渡して一緒に食えそうなら連絡するからお前もかけてこいよと先の約束を持ちかけたときだろう。
戸惑ったように「わしが出ていくなら命令はもうしまいじゃろうが」と言うサカズキをからかうつもりで「いらないならいい」と番号を書いたメモをひっこめようとしたら慌てて毟り取られたそれが大きな手の中でものの見事に灰になったのだ。
あのときのサカズキの顔ときたらまったく。

「なにをにやついちょる」

気色悪い、と深いシワをさらに深くしつつ食卓を挟んだ正面に腰を下ろした恋人をニヤニヤ眺めながら別にと笑う。
最初のクソいまいましい命令がなければこうして当然のように自宅で同じものを食べるなんて絶対になかったに違いないし、脳みそお花畑な元隊長のことは今でも大嫌いだがそれはそれとして感謝してもいいかなと思っただけだ。