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三年近く付き合っていた彼女の浮気が発覚し話し合いやら互いの部屋の私物の引き上げやらを終えてようやく縁切りが完了した夜、大量の酒とつまみを抱えたボルサリーノが家に上がり込んできた。
本人はからかいにきただけだと言っているがきっとおれが落ち込んでいないか気にして様子を見にきてくれたのだろう。
ボルサリーノはなんだかんだ言いつつ昔から世話焼きな男なのだ。
実際一人でいると気が滅入るので一緒に飲んで笑い飛ばしてくれたらありがたいと片付けたばかりで珍しくすっきりしている部屋に通し、酒とつまみのお返しに肉を焼いて晩酌を開始。
酒を酌み交わして談笑し、そうしてしばらくしてボルサリーノに「アルバはどういうのが好みなんだァ〜い?」と尋ねられておれは少し言葉に詰まった。
新しい相手でも紹介してくれる気だろうか。
正直彼女の浮気時の演技があまりにも完璧すぎて女性不審になりかけている今そういうことはしばらく考えられそうにないのだが。

「うーん……もう浮気はこりごりだし一途で健気な感じの子かな」

とりあえずは無難に答えておくかと思ってそう告げると、ボルサリーノは自分から聞いてきたくせに興味なさげにへェ、と生返事をして視線を逸らし酒を啜った。

「顔立ちだとか歳だとかには何もねェのかァ?それとも見た目なんてどうでもいいってェ〜?」
「どうでもいいとはまではいかないと思うけど、二の次三の次なのは確かだな」

見た目や年齢など関係ないと胸を張って言えるほど聖人ではないがこうでなければダメだと言い切るほどのこだわりもない。
いや、さすがに両手で数えられるような子供だとかは絶対に無理だけれども。

「……性別は?」
「ええっ?それは……それも、あー……まあ」

これまで考えたことがなかったが同性でもいいのかと問われて咄嗟に嫌悪感はわかなかった。
性的な問題はそのときにならないとわからないけれど例えばボルサリーノなら、とそこまで思い浮かべて頭の中のそれを慌ててかき消す。
ボルサリーノならいける、なんて、なにを馬鹿なことを。

「…………それなら、わっしでいいんじゃないかねェ〜」
「はあ!?」

脳内を読まれたかと思うような一言に動揺して大声を出すとピクリと酒を持つ手を震わせたボルサリーノが一拍開けて「冗談だよォ〜」と笑った。
心臓がバクバク脈打っているのは驚きのせいだけだと思いたい。
そうじゃないと困る。

「お前、そういう冗談はやめろ。マジで、本当にやめろよ」

真剣な顔で言い募るおれにボルサリーノは曖昧な笑みを返してくるが笑えない。
まったくもって笑えない。
傷心の相手にそんなことを言って、うっかり本気にしてしまったらどうするつもりだ馬鹿野郎め。