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「#幼馴染」のBL小説を読む
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おれの後輩くんはかわいくない。
男にかわいさを求めるほうが間違いだと言われればそうかもしれないが、それにしたってだ。
話しかけても返事すらしてくれなかった昔に比べればまだマシになった方とはいえ、短いやりとりに含まれる嘲りと嫌味と上から目線の酷さときたらもう。
おれよりおっさんで同じく人を馬鹿にしてくるジャブラですら多少の可愛げはあるのだから若者頑張れと言わざるを得ない。

「だからさァ、ほら、おれに対してもっと積極的に媚売ってこうぜ?」
「脈絡がないな。馬鹿が余計に馬鹿に見えるぞ」
「はい辛辣〜!かわいくねェ〜!」

大袈裟に騒ぐおれに注がれるそれがどうしたと言わんばかりの冷たい視線。
早々に心が折れそうになった。
つらい。
でもめげない。
馴れ合いたいってわけじゃないけどギスギスするより気楽にやっていけるほうが絶対いいじゃん。
おれはこの完全ブラックな職場を雰囲気だけでもアットホームにしてみせる…!

「せっかくネコ科の能力者なんだからさァ〜たまにはにゃあとか言ってみろって」
「そのふざけた真似を実行したとしておれになんのメリットがある」
「ん、んー……おれの好感度が爆上がりする、とか……?」

メリットとかそういう問題じゃなくてもっと気軽にコミュニケーションを楽しもうぜと思ったがそれを言ったところで楽しくないから付加価値の提示を求めているんだろうがと返されるのが目に見えているためグッと飲み込んであえて頭の悪い会話を続けると鼻で笑われた。
か、かわいくねェ〜〜!
顔がいいせいで余計腹立つ〜〜!

「話はそれで終わりか?」

終わりも何もそもそもこの会話に終着点なんてないんだけど。
そう考えているうちに椅子から立ち上がって歩き出したルッチがすれ違いざまおれの肩を掴んで耳元で「にゃあ」と囁くように鳴いた。

「……は?」
「これ以上に媚びてほしいなら上乗せだ」
「は?」

ついでとばかりに耳を甘噛みされ、お前本気でおれに好かれるのをメリットとして認識してんのかとか上乗せってなんだとかこれ以上どうするつもりだとか、ただでさえまとまらない考えが脳みその中で四散した。
からかわれたのかとも思ったのに去っていく背中はどう見ても上機嫌だ。
どうしよう、かわいい。
間違いなくかわいいんだけど、おれがほしかった可愛げと違う。